「個々の乳癌患者が理想とする乳房を再建する、自家組織の穿通枝皮弁を用いたオーダーメイド方式の乳房再建術の成功率は高い。自家組織による温かく柔らかく自然な外観の乳房再建を目指す」── 横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科・再建外科の佐武利彦氏は、9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会でそう語った。

 乳房再建術には、人工物を用いるインプラント法と、自家組織として穿通枝皮弁、動脈皮弁、脂肪注入などを用いる方法がある。

 穿通枝皮弁は、穿通枝をつけたままの脂肪組織を乳房に移植する方法。同センターでは穿通枝皮弁による乳房再建術を2003年から導入し、現在では年間100例を超える患者にこの方法で手術を行っている。

 佐武氏らは、患者が希望する部位から皮弁を採取するオーダーメイド方式で、脂肪を採取する部分の整容性を考慮し、採取部の筋肉・神経・血行にできるだけ負担を与えず、運動機能を障害しないことを念頭におき、自家組織による温かく柔らかく自然な外観の乳房再建を目指している。

 再建法の決定には、患者の希望(採取部位の選択、再建の大きさと健側の縮小・増量、リンパ浮腫の治療)、乳房側の要因(大きさと形、乳癌の術式、乳房の皮膚と筋肉の状態、放射線照射の有無など)、採取部の要因(妊娠出産の希望、体型など)が重要な因子となる。

 穿通皮枝弁は、体幹の9箇所、13部位から採取できる。臀部、大腿部、下腹部、背部、乳房周囲などで、大きく重量のある皮弁が採取できるのは下腹部、厚い皮弁が採取できるのは臀部である。皮弁が柔らかいのは下腹部や大腿部、硬いのは背部や臀部である。

 臀部から採取する場合の適応は、(1)自家組織による乳房再建を希望する患者、(2)将来の出産希望がある未経産婦や下腹部の脂肪が薄い経産婦、(3)下垂がなく厚みのある乳房を希望する患者――である。この方法による同センターの手術症例数は66例で、このうち血行障害による再手術を要したのは4例、成功率は98.4%である。採取部の機能障害は認められていない。

 大腿部から採取する場合の適応は、(1)自家組織による乳房再建を希望する患者、(2)将来の出産希望がある未経産婦や大腿部の脂肪が薄い経産婦、(3)中等度までの大きさの乳房や萎縮した乳房、下垂乳房の患者。この方法による同センターの手術症例数は74例で、このうち血行障害による再手術を要したのは3例、成功率は98.6%である。1例に一過性の坐骨神麻痺が発生した。

 下腹部から採取する場合の適応は、(1)自家組織による乳房再建を希望する患者、(2)将来の出産予定がない患者、(3)健側の乳房が大きく下垂している患者、(4)中肉中背から軽度の肥満の患者。この方法による同センターの手術症例数は226例で、血行障害による再手術を要したのは5例、成功率は99%である。

 穿通枝皮弁を下腹部から再取する場合、腹直筋や運動神経は温存される。ただし、深下腹壁動脈穿通枝皮弁(DIEP flap)では191例中5例(2.6%)に腹壁弛緩が発生した。原因は腹直筋前鞘の補強の緩みなどだった。浅下腹壁動脈皮弁(SIEA flap)では35例中0例(0%)だった。

 佐武氏らは、整容性についてもさまざまな工夫を行っている。例えば臀部から皮弁を採取する場合、左右非対称となることを避けるため、低容量の場合は臀部の上部から採取し、大容量の場合は左右の臀部から分割して採取している。

 また、ハルステッド法のように大きな組織欠損がある症例にも、DIEP flapによる乳房再建術は有用である。さらにリンパ浮腫を合併している症例でも、乳房再建術と血管柄付きリンパ節移植を行うことで、リンパ浮腫の改善も認められているという。

 佐武氏は、「すべての乳癌患者さんが理想的な乳房再建を得られることが、私達の希望」と話した。