乳房温存術中の術中放射線照射(IORT)は、線量21Gyによって、日本人でも安全に施行できることが、フェーズ1/2試験で確認された。名古屋大学医学部附属病院乳腺・内分泌外科(現 愛知県がんセンター中央病院乳腺科)の澤木正孝氏が、9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 IORTはイタリアなど欧州で研究が進められている。腫瘍床に対して直視下に照射でき、手術後の放射線治療に比べて低線量のため、心臓や肺への照射も軽減できるといわれている。そこで澤木氏らは、標準治療である術後の放射線治療と同等の効果を目指し、日本人での線量を決定するためのフェーズ1/2試験を行った。

 対象は乳房温存術を希望する乳癌患者で、腫瘍径2.5cm未満、術中病理組織所見で切除断端陰性、センチネルリンパ節陰性とした。主要評価項目は3カ月以内(短期)の安全性、副次評価項目は長期の有効性(乳房内再発率)と晩期安全性と設定された。短期の安全性は、NCI CTCAE v3.0で、晩期の安全性はRTOG/EORTC遅発性放射線反応評価規準を用いて評価された。経過観察は、術後1カ月は毎週、1年間は3カ月おきに、5年間は6カ月おきに行われた。

 フェーズ1試験は、線量を19Gy、20Gy、21Gyの3段階とし、各群3人ずつに行われた。すべての群でグレード3以上の有害事象は認められなかった。そのためフェーズ2試験の推奨線量は21Gyと決定された。

 フェーズ2試験は、21Gyで、23人に行われた。フェーズ1試験の患者を加えた計32人で安全性を評価したところ、グレード3以上の有害事象はなかった。21Gyの照射を受けた26人においては、線維化・深部結合組織はグレード1が23人、グレード2が2人、血腫はグレード1が9人、感染はグレード1が4人で、軟部組織壊死はグレード2が3人、疼痛はグレード1が22人だった。

 晩期安全性は、21Gyの26人中、グレード1(軽度の線維化、皮下脂肪消失)が13人、グレード2(中等度の線維化だが、症状のない照射部位の軽度の拘縮)が1人だった。追跡期間中央値は26カ月(11-39.5カ月)で、局所再発あるいは遠隔転移は認められていない。

 ただし術中に球体の遮蔽板を大胸筋上に設置するため、傷が大きくなることが危惧されている。それに対し澤木氏は、「若干大きくなるため患者さんへの説明は必要」と話した。現在は経過観察を続けており、今後、乳房内再発率などを検討していく。また多施設共同研究も計画しているという。