術前化学療法に及ぼすBMIの影響を日本人の乳癌患者で検討した結果、病理学的完全奏効(pCR)に対するBMIの影響は認められないことが示された。9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会で、千葉県がんセンター乳腺外科の岩瀬俊明氏が発表した。

 肥満が乳癌の化学療法やホルモン療法の効果に影響を及ぼすことが報告されているが、多くは欧米からの報告で、人種差や体型などを考慮すると、結果をそのまま日本人に当てはめるのは難しい。そのため岩瀬氏らは、日本人における術前化学療法に及ぼすBMIの影響を検討した。

 対象は2000年4月から2010年4月までに同センターで治療を行った乳癌患者で、術前化学療法施行後に手術を行った243人。pCRが得られたのは37人、pCR以外は206人だった。

 患者をWHO BMI Classification Criteriaに従って、やせ型(BMI<20)、普通(20≦BMI<25)、軽度肥満(25≦BMI<30)、高度肥満(BMI≧30)に分類した。

 その結果、やせ型が51人、普通が129人、軽度肥満が54人、高度肥満が9人となった。閉経の有無のみについて、これらの群間に有意差を認めた(p<0.05)。

 pCRが得られた患者の内訳は、やせ型が12人、普通が17人、軽度肥満が8人で、高度肥満が0人だった。pCR率はそれぞれ32%、46%、22%、0%で、有意差は認められなかった。

 pCR率に有意差を認めたのは、エストロゲン受容体(ER)の状況とリンパ管侵襲の有無においてだった(いずれもp<0.05)。閉経の有無、術式、術前化学療法におけるタキサン系薬剤の使用の有無、腫瘍のステージ、プロゲステロン受容体(PgR)の状況、HER2の状況については、いずれも有意差は認められなかった。

 肥満の患者でpCR率が低下する要因の一つとして、充分量の抗癌剤が投与されていないとの指摘があるが、今回の検討では、肥満群においても規定通りの用量で術前化学療法を完遂し、pCR率は低下しなかった。

 岩瀬氏は「日本人は欧米と比較して肥満群の割合が有意に少なく、欧米からの報告結果をそのまま当てはめることはできない。更なる検討が望まれる」と話した。