再発・転移乳癌患者はより死を意識し、生きる意味が揺らぎ、孤立感を生じやすい。「それに寄り添いながら、その人らしく生きる意味の再構築に付き合うことが重要である」──。9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会のワークショップ「再発治療と『心のケア』」で、国立病院機構九州がんセンターサイコオンコロジー科の大島彰氏はこう語り、再発乳癌患者を支えるチーム医療への取り組みを紹介した。

 再発乳癌患者において、適応障害うつなどの精神症状の有病率は約20%とされ、40%を超えるとの報告もある。海外の報告では、化学療法を拒否する患者の割合は、対照群の乳癌患者(3.8%)と比べてうつ状態の乳癌患者(48.7%)で顕著となることが示された。

 再発や進行など、癌医療における悪い知らせは、患者の将来への見通しを根底から否定的に変えてしまう。患者は喪失感を強く感じ、生きる意味が揺るぎやすい。

 したがって、癌治療では積極的な治療と緩和医療・緩和ケアを並行するとともに、再発前からの良好なコミュニケーションによる精神的サポートと再発後の心のケアを行うチーム医療が必要である。ただし、心のケアを行うサイコオンコロジストは少ないのが現状だ。

 同センターの再発乳癌患者を支えるチーム医療への取り組みとして、院内では、多職種カンファレンス、サポートグループや患者会によるピアサポート、心のケアの専門家による介入が行われている。院外では、全スタッフによる患者サポートや啓発講座の開催、多職種の勉強会などが行われている。

 患者の全人的苦痛(身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペイン)に対応するため、大島氏らは「乳癌チーム医療パス」を患者に渡し、「みんなであなたを支えます」というメッセージを伝えている。チームは、乳腺外科医、プライマリー看護師、精神腫瘍医、心理士、放射線診断医、形成外科医、腫瘍内科医、薬剤師、外来看護師、緩和ケアチームなど、多職種のスタッフで構成されている。

 一例として、40歳代で術後6年目に再発した患者は、ホルモン療法、放射線療法、化学療法を4年間継続してきたが、増悪した。肝・肺・骨などに転移し、PSは3。離婚歴があり、中学生の子供2人がいる。スタッフはギアチェンジの時期ではないかと考えている。

 このような症例に対し、大島氏らはJonsenの4分割法で、「医学的適応」「患者の意向」「QOL」「周囲の状況」に分けて検討する多職種カンファレンスを行い、情報を共有し、現在の病状と今後の方針を確認している。

 この患者では「QOL」で疼痛コントロールが不良であること、精神的につらい状況になっていること、「周囲の状況」で2人の子供を心配していることが検討課題となり、子供への心配に対応するカウンセラーを含む、緩和ケアチームの介入が検討された。

 患者・体験者が患者を支えるピアサポートとして、入院・外来患者が集まる月2回の定例会が開催されている他、個々の外来患者には告知後に担当医や看護師が声をかけ、希望による面談が開始された。目指すのは、患者・体験者も含めたチーム医療の構築である。

 また院外では、医療者と体験者で再発をテーマにグループワークを行う会や、再発についての市民公開講座を開催するなど、適切な情報発信を目指す取り組みが行われている。

 「抗癌剤治療の中止」などの悪い知らせを伝える場合は、医師の負担も大きい。こうした場合に重要になるのがコミュニケーションスキルであり、特に再発前からのコミュニケーションは重要である。

 医師が患者の心のケアに関してスキルアップすることは、患者の負担の軽減にもつながるため、九州・沖縄の乳腺外科医と精神科医、心療内科医、看護師などが参加する「乳がんサイコオンコロジー研究会」では、乳癌患者と家族の心のケアについて、グループワークを取り入れた勉強会を行っている。