乳癌に対する術前化学療法により得られる効果は、原発巣とリンパ節転移の間で一致しないケースがあり、原発巣でpCRが得られた症例はリンパ節転移が消失するケースが多いが、リンパ節転移が消失した症例では原発巣でpCRが得られないケースが多いことが示された。9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会で、癌研有明病院乳腺センターの桑山明子氏が発表した。

 近年、乳癌に対する術前化学療法(NAC)による原発巣の病理学的完全奏効(pCR)は予後が良好であると報告されている。また、NAC後のリンパ節転移消失例も予後が改善すると報告されている。さらに、原発巣よりもリンパ節転移の効果判定が予後に相関するという報告もある。

 そこで桑山氏らは、NAC後にリンパ節転移が消失する割合、原発巣とリンパ節転移の効果判定の相違、NAC後のリンパ節転移消失例の特徴を解析した。

 対象は、2006年1月〜2009年12月までに同院で乳癌と診断され、NAC前に腋窩リンパ節転移が細胞診もしくは組織診で証明され、NACを行った原発性乳癌165例。IV期、鎖骨上リンパ節転移陽性、胸骨傍リンパ節転移陽性、炎症性乳癌、異時性・同時性の両側乳癌は除外した。

 NACはアントラサイクリン系抗癌剤とタキサン系抗癌剤を使ったレジメンを用いた。NAC前リンパ節転移個数を超音波検査で評価するとともに、NAC後の病理診断は手術リンパ節標本の最大1割面で評価した。

 解析の結果、NAC後にリンパ節転移が消失したのは、165例中45例(27%)だった。

 次に、165例中、原発巣でpCRが得られた症例は18例(11%)で、そのうちリンパ節転移が消失していたpN0は14例(78%)、消失しなかったpN+は4例(22%)だった。原発巣でnon-pCRだった147例(89%)のうち、pN0は31例(21%)、pN+は116例(79%)だった。この結果から、原発巣pCRはリンパ節転移も消失する可能性が高いと考えられた。

 一方、165例中、リンパ節転移が消失した45例(27%)のうち、原発巣でpCRが得られたのは14例(31%)、原発巣がnon-pCRだったのは31例(69%)だった。リンパ節転移が消失しなかった120例(73%)のうち、原発巣がpCRだったのは4例(3%)、non-pCRだったのは116例(97%)だった。

 サブタイプ別にリンパ節転移の消失割合を解析した結果、LuminalA 109例では15%、LuminalB 20例では35%、トリプルネガティブ 20例では60%、HER2タイプ16例では63%だった。

 核グレード別(144症例)にリンパ節転移の消失割合を解析した結果、核グレード1 82例では13%、核グレード2 40例では38%、核グレード3 22例では55%だった。組織型別のリンパ節転移消失割合は、a1 22例で18%、a2 32例で34%、a3 97例で27%、その他14例で29%だった。

 これらの結果から、桑山氏は、原発巣とリンパ節転移の効果は一致せず、今回の検討では、原発巣でpCRが得られた症例の78%でリンパ節転移も消失するが、リンパ節転移が消失しても原発巣が残存する例が多く、HER2タイプやトリプルネガティブ、a2、核グレード3ではNAC後にリンパ節転移が消失する傾向にあると締めくくった。