乳癌に対するラジオ波焼灼療術RFA)は、「切らない乳癌治療」として注目され、腫瘍径が2cmを超える患者やリンパ節転移陽性の患者にも施行されている。しかし腫瘍径2.1cm以上では、2.0cm以下に比べて乳房内局所再発率が高いことが、10施設の治療例を対象にしたレトロスペクティブな研究で確認された。乳癌低侵襲治療研究会を代表して、那賀病院乳腺外科の谷野裕一氏が、9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 近年、RFAなどの低侵襲治療を受ける患者が増えていることから、日本乳癌学会の医療安全委員会は、乳癌低侵襲治療の現状に関するアンケート調査を行い、その結果を2010年6月に発表した。対象は学会認定831施設で、回答は547施設(回答率は66%)。RFAは29施設、1049人に行われており、その55%が臨床試験以外で実施されていた。

 なおRFAは日本乳癌学会診療ガイドライン外科療法2008年度版で、「乳房温存手術と同等の局所治療効果を有するとの根拠はなく、実地臨床で行う治療とはいえない」とされていた。

 乳癌低侵襲治療研究会は2005年に臨床試験実施を目的として創設された。今回は、世話人施設10施設におけるレトロスペクティブ研究の結果が報告された。対象は、RFAを行い、非切除の原発性乳癌患者とした。

 解析の結果、10施設で合計519人がRFAを受けていたが、このうち2施設での症例数が大半を占めた(A施設が229人、B施設が150人、その他の施設は計140人)。RFAが行われた患者の平均腫瘍径は1.59cm、観察期間中央値は1500日だった。T2以上の患者やリンパ節転移陽性の患者が2割を超える施設もあり、術後に放射線療法が行われていない例も見られた。

 腫瘍径別に乳房内無再発率を比較したところ、腫瘍径1.0cm以下の群と1.1cm以上2.0cm以下の群では有意な差はなかったが、2.0cm以下の2群に比べて、2.1cm以上の群では有意に無再発率が低かった(p<0.001)。

 3年以上観察できた患者(392人)での乳房内再発率は、腫瘍径2.0cm以下では5%未満だったが、2.1cm以上で高くなり、3.1cm以上では10%を超えた。またリンパ節転移陽性群は陰性群に比べて再発率は高く、RFA後に放射線療法が行われていない群は行われた群に比べて再発率は高かった。

 谷野氏は、T1に限るなど厳格な基準で施行すれば再発がなく良好な結果が得られていたことから、「T1N0のうち限局した患者ではRFAは安全だと考えられる」とし、「T1N0限局症例を対象にした多施設臨床試験が必要だろう」と述べた。また谷野氏の試算によれば、RFA適応乳癌は全乳癌の6%程度になるという。

 なお高度医療として、腫瘍径1cm以下の限局性の早期乳癌を対象にラジオ波焼灼療法の安全性と有効性を評価する多施設共同研究が、国立がん研究センター中央病院など6施設で実施されている。