乳癌治療において、センチネルリンパ節生検のみを行った場合と非センチネルリンパ節摘出を行った場合のリンパ浮腫などの術後合併症の頻度は変わらず、腋窩リンパ節郭清を行った場合と比べると、リンパ浮腫など術後合併症が有意に減少することが前向き評価の結果から明らかになった。9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会で、癌研有明病院の木村聖美氏らが報告した。

 センチネルリンパ節生検は、我が国でも保険適応となり、腋窩リンパ節への転移を確認する際の標準治療になりつつあるが、腋窩リンパ節郭清を行った場合とセンチネルリンパ節生検で終了した場合で、術後合併症の頻度がどの程度違うかなど、前向きに調査した例はほとんどない。今回木村氏らは、センチネルリンパ節生検で終了した場合のリンパ浮腫などの合併症の頻度や程度、関連因子について検討し、腋窩リンパ節郭清症例と比較した。

 対象は、2010年1月から2010年6月に原発性乳癌に対し、同院にて根治手術を施行した片側症例364例。後日対側乳癌手術を行った症例、転院症例、腋窩再発例、死亡例は除外している。

 手術前日に入院した際と、術後1年の外来受診の際の2回、両側上肢周径の計測を行うと同時に、痛み、知覚障害、運動障害、炎症などの合併症に関する問診を行った。浮腫は、術前と術後1年で両側上肢の腋窩周囲、肘の上下5cm、尺骨頭、手背周囲で周径を計測。患側と健側の周径が、術前より2cm以上増大していた場合、浮腫ありと判定した。

 センチネル生検のみで郭清を省略したSLNB群(145例、平均52.4歳)、非センチネルリンパ節も摘出したsampling群(104例、平均53.0歳)、腋窩リンパ節郭清を行ったALND群(115例、平均51.8歳)の3群について、合併症頻度を比較・検討した。sampling群は、術前画像検査でリンパ節転移が疑われた例、術前化学療法を施行した例、センチネルリンパ節近傍に目立つリンパ節が認められた例、腫瘍径が大きかった例などとしている。

 放射線治療を受けたのは、SLNB群40例、sampling群32例、ALND群60例。摘出リンパ数は、SLNB群1.9個(1〜5個)、sampling群4.4個(2〜19個)、ALND群18.1個(8〜33個)だった。

 リンパ浮腫が見られた例は、SLNB群で5例(3.4%)、sampling群で3例(2.9%)で、有意差はなかった。ALND群では29例(25.2%)でリンパ浮腫が見られ、SLNB群、sampling群と比べて有意差が見られた。

 リンパ節の摘出個数とリンパ浮腫の関係を見ると、10個以上摘出している場合にリンパ浮腫が増加していた。1個摘出した場合は4例(6.0%)、2個の場合は2例(2.9%)、3個で1例(2.0%)、4個から9個で1例(1.7%)、10個から14個で10例(32.3%)、15個から19個で10例(23.3%)、20個以上で9例(22.0%)だった。

 腋窩を中心とした痛みについては、SLNB群で10例(6.9%)、sampling例で12例(11.5%)、ALND群では31例(26.9%)がありと回答した。同様に、しびれについては、SLNB群で8例(5.5%)、sampling例で8例(7.7%)、ALND群では43例(37.4%)がありと回答した。運動障害については、SLNB群のうち133例(91.7%)が可動域を100%であると回答している。80%から99%と回答したのは12例(8.3%)、80%未満と回答したのは0例だった。sampling例では、100%が89例(85.6%)、80%から99%が14例(13.5%)、80%未満が1例(1.0%)だった。ALND群では、100%が74例(64.3%)、80%から99%が31例(27.0%)、80%未満が10例(8.7%)だった。このように、知覚障害、運動障害においても、ALND群と比較して、SLNB群、sampling群においては有意に少なかった。

 また、ALND群では、BMIが高いほど浮腫の頻度は高くなり、放射線治療の実施や術式とリンパ浮腫の発生との間にも関連が認められた。ただし、SLNB群とsampling群ではリンパ浮腫発生に関与する因子を見いだすことはできなかった。

 これらの結果から、センチネルリンパ節生検は腋窩郭清に比べ、術後の合併症を有意に減少させたとした。センチネルリンパ節生検例におけるリンパ浮腫発生に関連する因子については、今後も長期間の観察を行い、検討したいと木村氏は締めくくった。