CD133は乳癌術前化学療法の効果や転移再発予測に有効な分子マーカーである可能性が示された。9月2日から仙台市で開催されている第19回日本乳癌学会で、大阪市立大学腫瘍外科の青松直撥氏が発表した。

 同科ではステージIIa、IIb、IIIaの乳癌に対して術前化学療法を行っている。ただし、乳癌の術前化学療法については、効果予測に有用なバイオマーカーは明らかにされていない。

 近年、癌幹細胞が転移再発や治療抵抗性の原因と考えられるようになっており、癌幹細胞のマーカーの1つとしてCD133が見いだされている。そこで青松氏らは、術前化学療法施行例を対象に、CD133の術前化学療法の効果および転移再発の予測マーカーとしての有用性を検討した。

 対象は、2004年から2009年まで同科で術前化学療法施行後に手術を行った原発性乳癌102例。術前化学療法前の針生検標本を検体とし、術前化学療法は、FEC療法(5-FU 500mg/m2エピルビシン100mg/m2シクロホスファミド500mg/m2)とweeklyパクリタキセル(80mg/m2)、およびHER2の状態に応じてトラスツズマブを併用するレジメンで行った。

 治療成績は、臨床効果判定でCRが18例(18%)、PRが62例(61%)、NCが20例(20%)、PDは2例(2%)、奏効率(CR+PR)は78%だった。

 組織学的効果判定では、グレード1aが12例(12%)、グレード1bが34例(33%)、グレード2aが20例(20%)、グレード2bが16例(16%)、グレード3(完全奏効、癌細胞認めず)が30例(20%)。病理学的完全奏効率(pCR率、浸潤巣の完全な消失)は29.4%だった。なお、グレード2以上を組織学的治療効果ありと判定し、55%だった。

 CD133については、癌先進部の細胞質が免疫染色で50%以上染色されると3+、10〜50%を2+とし、3+、2+をCD133陽性、10%未満を1+、染色されない場合を0とし、1+、0をCD133陰性とした。

 対象102例のうち、CD133陽性群は47例、CD133陰性群は55例だった。CD133陽性群と陰性群の間で年齢、腫瘍サイズ、静脈侵襲、核グレードに有意差はなかったが、CD133陽性群に比べてCD133陰性例はリンパ節転移陰性が有意に多く、リンパ管侵襲も有意に陰性例が多かった。

 なお、対象者のintrinsic subtypeは、CD133陽性群でluminalAが20例、luminalBが4例、HER2が6例、basal likeは17例、CD133陰性群ではluminalAが26例、luminalBが4例、HER2が11例、basal likeが14例で、2群間で有意差はなかった。

 CD133発現と術前化学療法および再発との相関を解析した結果、pCRはCD133陽性群に比べてCD133陰性群で有意に多く、pCR率もCD133陰性群がCD133陽性群に比べて有意に高かった。また、CD133陰性群に比べてCD133陽性群で有意に再発が多かった。臨床効果は2群間で有意な差は見られなかった。

 pCRに対する多変量解析を行った結果、CD133陽性は陰性に対してオッズ比0.332(95%CI:0.123-0.897、p=0.030)と、独立した有意な効果予測因子として見いだされた。エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体については多変量解析では有意な予測因子ではなかった。

 CD133発現と生存曲線について解析した結果、無病生存率、全生存率ともにCD133陽性群に比べてCD133陰性群は有意に良好だった。

 無増悪生存期間に対する多変量解析を行った結果、腫瘍サイズ(4cm)、リンパ節転移(N1-3 vs. N0)、リンパ管侵襲、pCRは有意な予測因子ではなかったが、CD133陽性は陰性に対してオッズ比2.744(95%CI:1.005-7.493、p=0.049)、静脈侵襲陽性は陰性に対してオッズ比10.640(95%CI:1.990-56.883、p=0.006)と独立した予後因子として見いだされた。

 こうした結果から青松氏は、CD133陽性例はリンパ節転移、リンパ管侵襲が有意に高率、pCR率が有意に低率、転移再発が有意に高率で、無病生存期間に対する解析でCD133発現、静脈侵襲が独立した予後因子であったとまとめ、CD133は術前化学療法や転移再発予測に有用な分子マーカーであることが示唆されたと締めくくった。