進行乳癌S-1ドセタキセルによる術前化学療法の後、病勢安定(SD)もしくは病勢進行(PD)の患者にはEC療法あるいはトラスツズマブパクリタキセル療法を行うことで、さらに病理学的完全奏効(pCR)率が上がることが多施設共同臨床試験の中間報告で明らかになった。徳島大学胸部・内分泌・腫瘍外科の中川美砂子氏らが、9月2日から仙台市で開催されている第19回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 研究グループは、術前化学療法としてS-1とドセタキセルのフェーズ2試験を行い、奏効率は77.5 %、pCR率は22.5%と報告している。これは標準治療であるアントラサイクリン系抗癌剤とタキサン系抗癌剤の併用とほぼ同等の成績だった。

 中川氏らは、pCR率の向上を目指し、S-1とドセタキセル投与後に、EC療法もしくはトラスツズマブ+パクリタキセル療法を追加することの効果と安全性を検討した。主要評価項目はpCR率、副次評価項目として安全性、奏効率、乳房温存率、S-1の服薬コンプライアンスを評価した。

 投与は、3週おきに、S-1は80mg/m2/日を第1日から14日に、ドセタキセルは通常より少ない40mg/m2を第1日に投与し、これを4コース行った。その後、臨床的CR例には手術を、部分奏効(PR)例にはS-1とドセタキセルの併用を4コース追加し、SDあるいはPDでHER2陰性例にはEC療法を4コース行い、HER2陽性例にはトラスツズマブ+パクリタキセル療法を4コース行った。

 EC療法は3週おきに、エピルビシンは100mg/m2シクロホスファミドは600mg/m2を第1日に投与した。トラスツズマブ+パクリタキセル療法は4週おきに、トラスツズマブを初回は4mg/m2、2回目以降は2mg/m2を第1日、8日、15日、21日に、パクリタキセル80mg/m2は第1日、8日、15日に投与した。

 対象は腫瘍径2cm以上の乳癌で、20歳以上75歳以下、PS 0/1の乳癌患者。非浸潤癌あるいは微小浸潤癌は除外した。現在までにS-1とドセタキセルによる治療を受け、効果判定したのは28人。CRだった6人には手術を、PRだった13人にはS-1とドセタキセルの併用を継続し、SDだった8人のうち3人はトラスツズマブ療法を、ほかの5人およびPDだった1人にはEC療法を行った。

 その結果、pCR率は37%、病理学的奏効率は81.4%だった。乳房温存率は92.5%であり、S-1が80%以上服用できた患者が85.1%であった。また全例で支持療法が行われた。

 主な有害事象はグレード3の食欲不振と嘔吐が各7.4%、浮腫と神経障害、筋痛、爪障害、手足症候群が各3.7%だった。グレード3/4の好中球減少が77.7%、白血球減少が74%だったが、G-CSF製剤でコントロール可能だったとした。

 これらの結果から、中川氏は「今回検討したレジメンは、EC療法とドセタキセルの併用、S-1とドセタキセルの併用に比べて、pCR率も奏効率も良好な成績が得られた」と述べた。今後、60人までの登録を予定しており、サブ解析でS-1とドセタキセルの併用が有効な患者を明らかにしていきたいとした。