日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン(2010)では、高齢者に対する術後化学療法は推奨グレードBと位置づけられている。しかし70歳以上の高齢者でもトラスツズマブによる術後療法は安全に行えることが、レトロスペクティブな解析で確認された。癌研有明病院化学療法科の徳留なほみ氏らが、6月24日、25日に札幌で開催された第18回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 現在、70〜80歳でHER2陽性ステージ1〜3Aの乳癌患者を対象に、トラスツズマブ±化学療法の有用性を検討する無作為化臨床試験(N-SAS BC07/RESPECT)が進行している。試験は患者を無作為に2群に割り付け、1つの群にはトラスツズマブのみを1年間投与し、もう1つの群にはトラスツズマブの1年間投与と化学療法を併用、各群150人を予定している。なおHER2陽性はIHC 3+またはFISH+の場合としている。

 徳留氏らは、このRESPECT試験の実施にあたって、高齢者におけるトラスツズマブ術後療法の安全性を確認するため、レトロスペクティブな解析を行った。

 対象は9施設の39人で、年齢中央値は72.2歳(69〜84歳)。トラスツズマブの投与期間は平均で10.5カ月、中央値は12カ月で、1年間投与を終了したのは28人だった。

 化学療法とトラスツズマブの併用は27人(69.2%)で、トラスツズマブ単独は12人。化学療法にはアントラサイクリン系抗癌剤の使用が25人と9割以上を占め、レジメンではAC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)が11人で最も多かった。

 有害事象は8人に認められ、infusion reactionが6人、左室駆出率低下が4人、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)上昇が3人、心不全が3人(グレード3が2人、グレード2が1人)、間質性肺炎が1人(グレード5)だった。また心不全を発症した3人のうち1人(グレード3)には狭心症の既往があったという。

 今回のレトロスペクティブな解析の結果から、「日本人高齢者において術後トラスツズマブ療法は施行可能である。ただし十分に経過を観察する必要がある」とまとめた。また安全性が確認されたことから、RESPECT試験への参加を求めた。