乳房温存療法施行後の変形が術前の予想よりも大きいことを理由として、再建を希望する患者は少なくない。乳房温存療法を施行する患者は生命予後が良好であるだけに、術式の選択には個々の患者のライフスタイルを十分に考慮する必要がある。6月24、25日に札幌市で開催された第18回日本乳癌学会学術総会で、医療法人社団ブレストサージャリークリニックの岩平佳子氏が発表した。

 同クリニックでは、乳房温存療法施行後に再建を希望して来院する患者を岩平氏が診察し、その後担当ナースがカウンセリングを行う形をとっている。今回はそのカウンセリングから得られた情報をもとに、乳房温存療法の形態に関する患者の思いについて報告が行われた。

 2003年4月から2009年10月までに同クリニックを受診した乳房温存療法施行後の患者のうち、再建術が施行されたのは86人、初診のみで再建しなかったのは52人であった。放射線照射が行われていたのは67人だった。

 再建に人工物のみを使用したのは74人、自家組織を使用したのは6人、人工物と自家組織の併用は2人、中止は4人であった。乳房全摘術を行った患者で過去に乳房温存療法の治療歴がある患者は79人であったが、この人数は現在さらに増加している。

 主な再建理由は、「術前の予想よりも大きな変形」「ブラジャーがしづらい」「温泉や水泳の際に衣類を思い切って脱げない」などで、乳房全摘術を受けた患者とほぼ変わらない答えであった。一方、再建しなかった理由は、「肉体的・金銭的に思ったより大変」「良い結果が期待できない」などであった。

 岩平氏は再建にあたり、美しい乳房を作るための「5S」のうち、最も気になる項目を患者に確認し、評価している。5Sとは、Size、Shape、Softness、Symmetry、Scarである。

 一例として、乳房温存療法と放射線照射を行った患者の主訴は、「予想以上の変形」「凹み」「瘢痕」であった。患者はダイビングをする際、乳房温存療法を行った側のみウエットスーツが合わなくなったと訴えた。この患者では、5SのうちShapeとScarに問題があると考えられた。

 この患者には、照射の最も少ない部分からエキスパンダーを入れ、最後に瘢痕を切除した。ウエットスーツ着用時の問題は解決したが、乳輪乳頭が上昇するという問題は残った。 

 個々の症例に応じて、乳房温存療法後にはさまざまな再建法の選択があるが、「本来の温存手術より再建の方が大がかりとなる例が多かった」と岩平氏は話した。

 乳房を温存した患者は生命予後が良好であるだけに、乳房の形態にストレスを持ったままその後の人生を生きることは大きな負担となる。岩平氏は「個々の患者のライフスタイルを考慮して、術式を選択する必要があると考える」と結んだ。