進行または再発乳癌で、肺転移単独あるいはリンパ節転移単独の患者では、S-1単独あるいはS-1とトラスツズマブの併用で、長期間の病勢安定が可能になることが確認された。日本大学医学部乳腺内分泌外科の榎本克久氏らが、6月24、25日に札幌で開催された第18回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 2005年から2009年に、アントラサイクリン系抗癌剤やタキサン系抗癌剤投与後にS-1を投与した進行・再発乳癌25人を対象とした。年齢は34〜78歳(平均58.5歳)。ステージ1が1人、ステージ2Aが6人、ステージ2Bが5人、ステージ3Aが8人、ステージ4は5人。再発部位は肝が12人、肺が5人、脳が4人、皮膚が1人、骨が15人、リンパ節単独が2人だった。

 無病期間(disease free interval: DFI)が10カ月未満だったのは、ステージ4の患者と35歳未満の若年性乳癌患者だった。肝転移のある患者では病勢進行が認められることが多かったが、肺転移単独やリンパ節転移単独では長期の病勢安定(long SD)が見られた。

 副作用としては、グレード1が10人(色素沈着、口内炎)、グレード2が1人(口内炎)、グレード3が1人(口内炎)だった。

 榎本氏は発表の中でlong SDの見られた2人の症例を紹介した。1人はステージ4で、FEC(75)とドセタキセルを投与し、局所制御のため胸筋温存乳房切除術と腋窩リンパ節郭清を行った後に、レトロゾールとビノレルビンを投与したが、副作用のため中止。カペシタビンを投与したがグレード2の副作用が出て投与を中止し、3年前からS-1の継続投与を行っている。

 もう1人はステージ3Aで、胸筋温存乳房切除術と腋窩リンパ節郭清を先行して施行後に、FEC(75)を投与したがリンパ節転移が認められた。週1回のパクリタキセル投与とS-1による4週投与2週休薬を行ったが、グレード2の副作用のために中止した。カペシタビンやUFTを投与したがグレード2の副作用で投与を中止した。1年前からトラスツズマブとS-1による2週投与2週休薬を行い、治療を継続している。

 このような結果から、「S-1以外の5-FU系薬剤投与後でも副作用なくS-1投与は可能であり、トラスツズマブ併用では投与方法を工夫することで有害事象を認めず、long SDが見られた。分子標的治療と併用することによって、より効果的な治療ができる可能性がある」とまとめた。