乳癌に対しセンチネルリンパ節生検(SLNB)を行って腋窩郭清(Ax)を省略した患者では、Axを行った患者よりも術後の肩関節可動域の回復率が高いことが示された。回復率は乳房温存術とSLNBを行った群で最も上昇した。6月24、25日に札幌市で開催された第18回日本乳癌学会学術総会で、藤田保健衛生大学乳腺外科の宮島慎介氏が発表した。

 乳癌に対するSLNBは、術前診断で腋窩リンパ節転移陰性の症例に広く行われている。

 宮島氏らは、患側上肢への侵襲性に着目して肩関節の可動域を測定し、SLNBのメリットについて、Axを行った群と比較検討した。

 対象は、2006年1月から2009年11月までに乳癌手術を受け、肩関節可動域の測定が可能であった362人。SLNB群とAx群において、肩関節可動域について、術前の計測値をもとに、退院時、術後1カ月と3カ月で比較検討した。回復は、術後可動域角度が術前可動域角度からマイナス10度以内と定義した。

 術式別の内訳は、乳房温存術とSLNB(1群)は174人(48.1%)、乳房切除とSLNB(2群)は67人(18.5%)、乳房温存術とAx(3群)は68人(18.8%)、乳房切除とAx(4群)は53人(14.6%)。年齢中央値、術前屈曲角度と術前外転角度の平均値に、4群間で差はみられなかった。入院日数の中央値は、1群6日、2群9日、3群10日、4群13日だった。

 屈曲可動域の回復率はどちらの群も段階的に上昇したが、術後3カ月でSLNBを行った1群と2群は85%、Axを行った3群と4群は52%となり、有意差を認めた(p<0.001)。

 外転可動域の回復率も同様で、術後3カ月でSLNBを行った1群と2群は90%、Axを行った3群と4群は58%となり、有意差を認めた(p<0.001)。

 術式別に4群の屈曲可動域の回復率をみると、術後3カ月の時点で、1群91%、2群71%、3群55%、4群49%であった。1群は他の3つの群に対し有意な回復率の改善を示した(それぞれp=0.008、p<0.001、p<0.001)。2群も3群と4群に対し有意な回復率の改善を示した(それぞれp=0.047、p=0.003)。

 術式別に4群の外転可動域の回復率をみると、術後3カ月の時点で、1群92%、2群86%、3群62%、4群53%であった。1群は3群と4群に対し有意な回復率の改善を示したが(いずれもp<0.001)、2群との間には有意差はなかった。

 未回復例における肩関節可動域の減少度数は全体的にSLNB群の方が小さかったが、いずれの時点においてもAx群と比べて有意差はみられなかった。

 宮島氏は、「術後の肩関節可動域の回復率が高いことは、QOLの向上につながると考えられる。さらに長期の観察と、未回復例の要因についての検討が必要」と話した。