エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)、HER2が全て陰性のトリプルネガティブの患者は乳癌全体の15.5%を占め、予後不良の傾向がある。しかしアントラサイクリン系製剤とタキサン系製剤を中心とした術前化学療法で、病理学的効果が得られやすいことが日本乳癌学会の班研究で確認された。

 これらの結果は、2007年度班研究「Triple negative乳癌の生物学的特徴と治療法に関する研究」によるもの。7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会で、研究班の班長である熊本大学乳腺・内分泌外科の岩瀬弘敬氏が発表した。

 研究班は、まず日本乳癌学会に2004年度から登録された患者1万4749人を対象にトリプルネガティブ乳癌の特徴を検討した。登録患者のうち、ERとPgR、HER2がすべて検索できたのは約8割の1万1705人。ERとPgR、HER2の状態によって四つのサブタイプに分けたところ、ER陰性、PgR陰性、HER2陰性のいわゆるトリプルネガティブの患者(以下、トリプルネガティブ群)の割合は15.5%であった。

 ほか三つのサブタイプは以下の通り。HER2が陰性で、ER陽性/PgR陽性もしくはER陽性/PgR陰性もしくはER陰性/PgR陽性(以下、A群)が最も多く70%を占めた。HER2が陽性で、ER陽性/PgR陽性もしくはER陽性/PgR陰性もしくはER陰性/PgR陽性(以下、B群)は7.3%、ERとPgRがともに陰性でHER2陽性(以下、HER2群)は8.2%だった。

 四つのタイプを比較すると、発症年齢や乳癌の家族歴を有する割合に大きな違いはなかった。ところが、閉経前患者の比率がA群は37.1%、B群は38.8%であるのに対し、HER2群で24.1%、トリプルネガティブ群で28.1%と少なく、「トリプルネガティブの患者に若年者が多いという傾向はなかった」(岩瀬氏)。

 続いて、14施設の2331人を対象に予後と術前化学療法の効果を検討した。観察期間中央値は47.8カ月。HER2群とトリプルネガティブ群の無病生存率と全生存率はA群とB群に比べて低く、予後不良であることが確認された。

 アントラサイクリン系製剤とタキサン系製剤による術前化学療法については、臨床的効果については、完全奏効(CR)がA群で22.7%、B群で30%、HER2群で26.7%、トリプルネガティブ群で37.5%と、トリプルネガティブ群で高い傾向はあったが、「全体的には4群間でそれほど大きな違いは見られなかった」と岩瀬氏。

 しかし病理学的効果を比べると、グレード3(完全奏効)がA群で0%であるのに対し、B群で22.2%、HER2群で15.4%、トリプルネガティブ群で13.2%、さらにグレード2(かなり有効)がそれぞれ16.7%、44.4%、26.9%、28.3%だった。このことから、「術前化学療法はHER2陽性のB群およびHER2群に続いて、トリプルネガティブ群で高い病理学的奏効率を示した」と述べた。また、トリプルネガティブ群で奏効性の見られた患者では予後良好であった。