温存乳房内再発に対しては再切除を含めた集学的治療が有用で、症例を選択することで再温存手術も充分に可能と考えられる。7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術集会で、慶應義塾大学の神野浩光氏が報告した。

 乳房温存手術は早期乳癌の標準治療として定着しているが、特徴的な再発形式として温存乳房内再発があり、予後不良因子となる可能性もある。しかし、治療法としてまだ定まったものはない。そこで神野氏らは、温存乳房内再発に対する治療法とその予後を明らかにすることを目的として検討を行った。

 対象は、1988年から2005年に慶應義塾大学病院で乳房温存手術が施行された原発性乳癌1372人のうち、平均観察期間73カ月の時点で温存乳房内に局所再発を認めた56人(4.1%)。

 対象の再発時の年齢中央値は52歳(28〜76歳)。温存乳房内再発の位置では初発腫瘍と同領域の四分円が73.2%を占めた。対象全体の無再発期間(DFI)の中央値は40.1カ月。温存乳房内再発の部位によるDFIの違いをみると、初発腫瘍とは異なる四分円に再発した場合に比べ、初発腫瘍と同領域の四分円に再発した場合は有意に予後不良であった。

 温存乳房内再発に対する治療としては、85.6%で再切除が可能だった。内訳としては全体の55.3%が乳房切除術、30.3%が再温存手術。炎症性再発など、手術適応とならない患者には化学療法が施行された。

 再切除後の補助療法として、内分泌療法は39.6%、化学療法は22.9%、内分泌化学療法は8.3%に施行された。つまり約7割の患者に再切除後の薬物療法が行われたことになる。その他の患者は手術のみだった。

 予後については、温存乳房内再発に対し乳房切除と再温存を行った場合で比較すると、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに有意差はみられなかった。

 一般的にDFIが短いと予後不良といわれる点については、DFIを2年以内と2年以降に分けた比較を行ったところ、温存乳房内再発後のDFSはDFIが長い方が良い傾向がみられたものの、2群間で有意差はみられなかった。

 さらに、初発腫瘍ならびに再発腫瘍の脈管侵襲の有無による再発後の生存の比較では、陽性の場合にいずれの腫瘍でもDFSは有意に不良だった。また、最初の手術時のリンパ節転移の有無で再発後の生存を比較すると、陽性の場合にDFS、OSともに不良となる傾向がみられた。これらの点から、初発腫瘍および再発腫瘍の脈管侵襲は再発後の有意な予後因子とみられた。