乳腺内視鏡手術は、腋窩郭清術施行例においても整容性に対する患者の満足度が高く、良好なQOLが維持できる治療法と考えられる――。7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会で、駿河台日本大学病院外科の山形基夫氏が発表した。

 乳腺内視鏡手術は、術後の上腕浮腫や運動制限がほとんどないため術後リハビリを必要とせず、乳腺部分切除から皮下乳腺全摘術+腋窩郭清術まで連続した術式として一度に施行できることもある。

 山形氏の報告によると、乳輪アプローチによる内視鏡下乳房温存術(乳腺部分切除+腋窩リンパ節郭清)の施行後5年以上経過した142人の遠隔成績は、生存率95.1%、再発率4.9%で、通常の手術と同等の成績だった。上腕浮腫および機能障害は2人(1.4%)、術後に局所疼痛が残存したのは4人(3.6%)のみ。

 整容性の向上を目的に山形氏らは「乳腺を縫合しない」方法で良好な治療成績を上げている。通常、乳腺を縫合すると乳房の位置が上昇し、左右の乳房の位置がずれてしまう。そこで、腫瘍占拠部位が上部の症例では、切除範囲30%までの場合なら可吸収性止血剤の酸化セルロース(商品名:サージセル・アブソーバブル・ヘモスタット、以下サージセル)を用いて欠損部を充填し、縫合を行わない再建が有用なようだ。最終的にサージセルは液化するため残存しない。すでに364人(良性69人、悪性295人)にこの方法が用いられ、ほぼ満足すべき形態を保持している。

 ただし、この方法では浸出液漏出が全症例の約10%にみられることにも注意が必要だ。原因は不明だが炎症反応と考えられ、電気メスで広範囲に皮弁を形成した場合などに多い。正常乳腺から浸出液を穿刺することで改善する。

 切除範囲が30%を超えた場合は、同一の創部から皮下乳腺全摘術を行い、バッグを用いた再建を行う。通常バッグ再建ができない大胸筋筋膜浸潤例であっても下腹部の皮膚を採取して表皮をメスで剥離し、真皮のみを使用して大胸筋欠損部を修復することで再建が可能になる。

 QOLの向上には、術後のリンパ浮腫を防ぐことも大切だ。山形氏らが行っている内視鏡下腋窩リンパ節郭清術では、PDBバルーンを使用して腋窩腔を剥離し、センチネルリンパ節生検を行い、陽性であれば郭清する。PDBバルーンを膨らませると、肋間上腕神経より浅い部分が剥離される。この状態で先に浅部を、次いで深部を郭清する。

余分な脂肪組織を郭清することがなく、周囲へのダメージも小さいため、側副のリンパ流が確保でき浮腫はほとんど出現しない。術後1日目で十分に上腕を挙上することが可能で、疼痛もほとんどない。ほとんどの患者は術後約4日で退院するという。

 山形氏は「整容性や機能温存、精神的な侵襲、QOLなどについて、長期的な手術侵襲を小さくできる点が内視鏡手術のメリットではないかと考える」と話している。