「乳房に気になるしこりがある」などと自覚していても、なかなか医療機関を訪れようとしないのは、若年者よりも高齢者、生命保険に未加入、家族に癌になった人がいない――といった人たちだ。

 7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会で、国際医療福祉大学大学院保健医療学研究科、国際医療福祉大学三田病院の川上憂子氏が、乳腺外来受診者のデータを解析して報告した。

 国際医療福祉大学三田病院の乳腺外来を受診した患者159人(全例女性、平均年齢50歳)を対象に、異変に気付いてから受診までにかかった期間を明らかにし、その長短に影響したと考えられる因子を抽出した。

 受診のきっかけは、乳癌検診70人(44%)、自己検診による異常の自覚が89人(56%)だった。受診時に早期癌だったのは112人(70%)で、手術を施行した63人中、乳房温存は47人(75%)。現在までに8人が死亡した。

 受診までに要した期間は、0日から2年と広範囲に及んだ。初診時の年齢では70代で最も期間が長く、次いで50代、30代、20代、60代、40代と続いた。生命保険未加入、家族内に癌罹患者がいない、豊胸手術を含む乳房に関する既往歴がある、糖尿病や白内障などの疾患を持つ場合にも、期間が長くなる傾向を認めた。また、受診のきっかけが乳癌検診の場合よりも自己検診の場合、家事手伝いや学生など定期的な検診が義務づけられていない人たちで期間が長かった。

 多くの医療関係者がそうであるように、川上氏も「なぜもっと早く受診してくれなかったのか」と思う人たちにしばしば出会ってきたという。川上氏は、「今回明らかになった(受診までに時間を要する)対象への介入は、乳癌治療において有意義。受診行動に影響したとみられる因子の分析から介入方法を具体化すれば、効率的な介入が実現できると考えられる」と話した。今後、サンプル数と対象とする病院を増やしながら調査を続けていくという。