HER2陽性転移再発乳癌患者に、経口5FU系抗癌剤のS-1と抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを併用しても、S-1の薬物動態に影響を与えないようだ。5人の臨床例から明らかとなり、1部の患者では抗腫瘍効果が確認された。特に問題となる副作用もなかったことから、S-1はトラスツズマブと併用する薬剤の一つとなることが示唆された。

 成果は7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会で東海大学医学部乳腺・内分泌外科の鈴木育宏氏が発表した。

 臨床研究はS-1とトラスツズマブ併用療法の安全性を検討するとともに、S-1の血中濃度測定を行い、トラスツズマブとの薬物相互作用を検討する「ステップ1」と、併用療法の抗腫瘍効果と安全性を確認する「ステップ2」から構成される。

 今回の発表は、ステップ1の最初の5人の結果だ。投与コースは1コースを21日とし、患者にはS-1の80mg/m2を1日目から14日間と22日目から14日間経口投与した。トラスツズマブは、1日目、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目に投与した。トラスツズマブの投与量は初回が4mg/kg、2回目以降は2mg/kg。各コースの1日目に採血を行い、薬物動態を調べた。

 試験の結果、併用療法を行った場合のS-1の血漿中の濃度推移は、S-1を単独投与した場合に得られるパターンに類似し、S-1の代謝に影響はないことが示された。5人での併用療法の効果は1人が部分奏効(PR)、2人が安定状態(SD)、2人が増悪(PD)。毒性は3人の患者では現れず、1人でグレード2の肝機能障害が発現した以外は、グレード1だった。