第17回日本乳癌学会学術総会が7月3日と4日の2日間、東京・お台場で開催される。演題数は過去最多の1600超となり、盛り上がりを見せそうだ。学術総会会長を務める芳賀駿介氏に、今回の見所を聞いた。


――今回の学術総会のテーマは「Human-Based Medicine」となっていますが、この言葉を選ばれた理由は。

芳賀 Evidence-Based Medicine(EBM)をベースとしつつも、患者に優しい治療であることが大切との考えからです。患者さんによって家庭環境や社会的事情は様々。例えば、「脱毛はどうしても嫌だ」という患者さんもいれば、「化学療法のために半年会社を休んでしまっては、解雇されてしまう」という悩みだってあります。一律に「EBMがあるからこの治療」というわけにはいかないのです。看護師、薬剤師、臨床心理士とも連携し、個々の患者さんごとの“標準治療”を考えなくてはならない、そんな思いで「Human-Based Medicine」をテーマに選びました。
 招待講演の演者である米国外科学会の重鎮、Stephen B Edge先生にも「More Than Guideline」をテーマに、米国の乳癌診療の現状についてお話いただきます。

――演題数が過去最多とのことですが、どのような演題が多いのでしょうか。

芳賀 大学病院と診療所がいかに連携をとるかといった「実地診療の現状と問題点」に関する演題が最も多く集まりました。東京や大阪といった大都市には専門医が多数いますが、少数しかいない県もあります。いかに医療連携を図るか、患者さん本意の連携で医療の質を高め、治療の均てん化を目指すかに、みんな関心があるようです。数%ですが、認定看護師からの演題も出ています。
 一方で、外科に関する演題が極めて少ないというのも特徴の一つです。乳房の整容性についての演題はありますが「こういう手術法がいい」なんていう演題は皆無に近い。外科だけではなく、診断、化学療法、放射線治療、緩和ケア――。トータルで乳腺腫瘍学である、ということをプログラム編成にあたって強く感じました。

――シンポジウムの見所は。

芳賀 まずは、専門医制度の問題点について考える「乳腺診療の今後を考える」が注目です。乳癌患者約5万人に対し、乳腺専門医は1000人足らずです。なかなか増えないうえ、今の制度のままでは乳腺専門医の資格を更新するタイミングで問題が生じます。乳腺専門医に認定されるには、外科の専門医でなくてはならないわけですが、外科の専門医を更新するには5年間で100例以上の手術をこなさなくてはなりません。例えば乳腺クリニックを開業して第一線で活躍していても、外来だけやっていたら手術件数が足りずに外科の専門医を更新できない。そうした場合、乳腺専門医が更新できなくなるのか? 若手医師からベテランまで、学会の会員全体でこの問題について議論します。乳腺専門医の質を保つことが前提ですが、専門医制度がどうあるべきかを考える第一歩にしたいと考えます。

――非浸潤性乳管癌(DCIS)の大きなシンポジウムもありますね。

芳賀 DCISはほぼ100%治りますが、がんが広範囲に及ぶことが多い。治療法や生物学的特徴などいろいろわかってきたものの、例えばDCISに対してセンチネルリンパ節生検を行うべきかどうかについても、議論が十分尽くされているわけではありません。今回は“DCISを丸裸にする”のが目的です。病理もあるし、基礎、臨床――現状で分かっていること全てを明らかにして、掘り下げていきます。

――センチネルリンパ節生検については、パネルディスカッションもあるようですが。

芳賀 センチネルリンパ節生検は、来年保険収載される可能性が高くなっています。保険収載されるということは「どこの施設でやってもよろしい」ということ。ならば、正しいやり方とピットフォールについて、もう一度みんなで議論していただく場を、と考えました。