腹腔鏡下と小開腹での操作を組み合わせた腹腔鏡補助下肝切除術(LAH)は、気腹下で肝離断を行うことで出血量がより減少し、鏡視下で精緻な手技が可能であることから、適応を拡大しても有効と考えられる――。9月19日から千葉県浦安市で開催された第49回日本胆道学会学術集会で、岩手医科大学医学部外科学講座の高原武志氏は同科で開発を進めているLAHの有用性を紹介した。

 同科では積極的に鏡視下手術を導入しており、肝臓領域では同科のオリジナル手術術式であるLAHを2002年から導入した(H. Nitta, et al. Ann Surg. 2010;251:450-53)。LAHは、肝の授動を腹腔鏡下で行った後、小開腹を行い直視下で肝離断を行う術式。当初、小開腹は右肋骨弓下に行われていたが、その後、上腹部正中切開(12cm)に変更された。適応は、腫瘍径10cm未満であることとし、強度の癒着や脈管浸潤を伴う症例、肝門部胆管癌、生体肝移植のレシピエントの手術は除外していた。

 2011年1月以降は、LAHの適応をさらに高難度手術に拡大し、脈管浸潤を伴い血行再建を要する症例、尾状葉全切除を必要とする肝門部胆管癌も含めた。

 高原氏らは、同科で腹腔鏡補助下肝葉切除術を行った41人と完全腹腔鏡下肝葉切除術を行った20人について、右葉と左葉に分けて、手術時間、出血量、在院日数、プロトロンビン時間-国際標準化比(PT-INR)、ASTを検討した。

 右葉切除において、出血量とPT-INRは腹腔鏡補助下肝葉切除術と比べて完全腹腔鏡下肝葉切除術で低値だった。左葉切除では、完全腹腔鏡下肝葉切除術でASTが低値だった。いずれのパラメータでも、完全腹腔鏡下肝葉切除術の劣性は認めなかった。

 この結果から、小開腹の直視下よりも気腹下で肝離断を行うことで、より出血量が減少することが示された。加えて鏡視下では、拡大視効果による安全な肝支持間膜の切離が可能で、下大静脈周囲の剥離などにおいても緻密な手技が可能というメリットが考えられた。

 2011年以降にLAHを行った肝門部胆管癌患者は9人だったが、肝葉切除に関し、鏡視下での肝離断がほぼ確立されたことから、最近の2人ではLAHの方法を変更している。肝の授動と肝離断は鏡視下で行い、再建および三次元での郭清が必要な肝十二指腸間膜のリンパ節郭清は小開腹を行い直視下で行うというものだ。

 出血量は、先行の7人では500cc以上だったが、方法を変更した2人ではいずれも300cc以下に抑えられた。

 高原氏は、「鏡視下での下大静脈からの尾状葉剥離と気腹下での肝離断などを組み合わせたLAH(Hybrid肝切除)は、現時点で最も有効と考えられる。さらに症例数を積み重ねていきたい」と述べた。