肝内結石症肝内胆管癌を対象とした検討の結果、肝内胆管癌の一部は膵癌と同様に早期段階でKRAS遺伝子変異により生じる経路を介して発癌する可能性が示された。肝内結石症における早期癌病変(BilIN)でも25〜44%の頻度でKRAS遺伝子変異が認められることが明らかとなった。9月20日から東京で開催された第48回日本胆道学会総会で、金沢大学医薬保健研究域医学系形態機能病理学の佐々木素子氏が発表した。

 膵癌では約9割にKRAS遺伝子変異が認められることが示されている。肝内胆管癌でのKRAS変異は膵癌に比べて低率で、胆管癌で50%、肝内胆管癌20〜30%という報告があるが、胆道系早期病変であるbiliary intraepitherial neoplasia(BilIN)におけるKRAS変異についてはこれまで十分に検討されていない。

 そこで佐々木氏らは、異形や炎症を伴う病変を有するものが多く評価対象として適している肝内結石症30例と、肝内胆管癌39例におけるKRAS遺伝子変異を調べた。

 肝内結石症では、BilIN-3(上皮内癌)(10例)、BilIN-2(15例)、BilIN-1(12例)、肝内大型胆管(12例)、胆管周囲付属腺(9例)。肝内胆管癌では肝門型(22例)、末梢型(19例)を解析対象とした。病変部はレーザーキャプチャマイクロダイセクションにて単離し、DNAを抽出後、直接シークエンス法でcodon12、13部位のKRAS変異を調べた。

 KRAS遺伝子変異は、BilIN-3では30%、BilIN-2では44%、BilIN-1では25%、肝内大型胆管では42%、胆管周囲付属腺では44%、肝内胆管癌では31%で認められた。肝内胆管癌では肝門型と末梢型とで頻度の差はなかった。

 また、肝内大型胆管、胆管周囲付属腺にKRAS遺伝子変異が見られた症例では、BilINにもKRAS変異を生じる傾向があること、また、胆管周囲付属腺では、上皮における異形の有無とKRAS遺伝子変異には明らかな関連はないと考えられた。

 以上の結果より、佐々木氏は、肝内胆管癌の一部は、膵癌と同様に早期段階でKRAS遺伝子変異が生じる経路を介して発癌する可能性が示唆される、と結んだ。