全国調査に登録された肝内結石症例のコホート調査と肝内胆管癌発生の危険因子の検討から、肝内結石症において肝切除術は有意に発癌リスクを低下させ、胆道手術既往例では切石のみでなく狭窄の解除が必要であること、胆道手術の既往がない症例(特に左葉例)は肝切除術の良い適応と考えられる結果が示された。9月20日から東京都で開催された第48回日本胆道学会学術集会で、杏林大学医学部消化器・一般外科の横山政明氏が発表した。

 肝内結石症は良性疾患であるが、完治は難しく、再発を繰り返すことも少なくない。また、肝内胆癌の合併を5%から10%で認めるとされる。

 横山氏らは、発癌から見た肝内結石症の取扱いを検討するため、肝内胆管癌発生の危険因子を統計学的アプローチで解析し、病像や治療の介入、臨床経過がどの程度発癌に影響するかを解析した。

 1998年度に厚生労働省肝内結石症調査研究班により施行された全国調査登録例473人に新たに追加調査を施行し、返答を得た306人中を検討し、30項目にすべて回答を得て、5年以上のフォローアップが可能だった295人を対象とした。30項目には、以下の項目が含まれた:性別、年齢、臨床症状、結石種類、結石存在部位、結石存在葉、治療内容、退院時問題点、退院後経過中の問題点、結石再発、ウルソデオキシコール酸(UDCA)内服、癌の合併。

 年齢はROC(receiver operating characteristic)解析でカットオフ値を62歳に設定した。全検討項目に対し、Kaplan-Meier法で生存分析を行い、log-rank検定でp<0.2となった項目にはCox回帰分析を行い、発癌に影響を与えると思われる因子を抽出した。

 肝内胆管癌は有意な予後規定因子となっており、全症例を対象に解析すると、年齢62歳以上(ハザード比3.316)、切石のみ(ハザード比2.646)が発癌に有意に影響を与える因子として抽出された(それぞれp=0.021、p=0.020)。

 次に、肝内結石症診療フローチャートに従い、胆管手術の既往の有無で層別に解析を行うと、胆道手術既往例126人では、年齢62歳以上(ハザード比8.154)、退院時の胆道狭窄(ハザード比4.140)が発癌の危険因子として抽出された(それぞれp=0.017、p=0.024)。一方、胆道手術の既往がない症例169人では、左葉例(ハザード比5.350)が発癌の危険因子として抽出され(p=0.033)、肝切除術がハザード比0.073で発癌の危険を下げる有意な因子として抽出された(p=0.013)。さらに、胆道手術の既往がなく、無症状、胆道狭窄がない症例47人では、発癌に影響する有意な因子は認めず、経過観察が妥当と考えられた。

 横山氏は「切石のみでは将来的に発癌のリスクになりうる。肝内結石症の病態は多彩であり、各病態により適切な治療を選択すべき」と話した。