胆道癌に対する術前化学療法(NAC)による肝障害の検討から、S-1+ゲムシタビンによるNACが肝機能検査所見に与える影響は少ない可能性が示された。9月20日から東京都で開催された第48回日本胆道学会学術集会で、横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学の森隆太郎氏が発表した。

 森氏らは、胆道癌の手術成績の向上を目指し、NACの有効性の評価を進めている。大腸癌肝転移では化学療法による肝障害が報告されているが、胆道癌での報告はない。そこで森氏らは、胆道癌に対するNACが引き起こす肝障害の程度と術後合併症に与える影響を明らかにするための検討を行った。

 対象は、2007年6月から2012年4月までにNACを施行した進行胆道癌患者47人。このうち開腹手術が行われたのは41人(87%)で、切除可能だったのは33人(70%)、腹膜播種などで切除不能だったのは8人(17%)だった。
 
 NACは3週間を1サイクルとして、S-1 60mg/m2は2週投与1週休薬とし、ゲムシタビン1000mg/m2は週1回投与で2週投与1週休薬とした。これを3サイクル施行し、ゲムシタビンの最終投与から4週休薬後に開腹手術を行った。
 
 NACが肝機能に与える影響について、NAC施行前後の検査値を比較した。検討項目は、総ビリルビン(T-Bil)、アルブミン(Alb)、AST、ALT、血小板(Plt)、インドシアニングリーン試験15分値(ICGR15)、ICG消失率(ICGK)とした。NAC施行前後にPET-CTを撮影し、腫瘍の状態を評価した。さらに肝機能不良例にはNAC施行後の術前に予定残肝組織から生検を行い、肝障害度を評価し、術後合併症との関係を検討した。検討項目は、新犬山分類に従った肝線維化と活動性炎症、脂肪変性、胆汁鬱滞とした。

 NAC施行前後の肝胆道系酵素の変化をみると、NAC施行後に平均値が有意に低下していたのは、T-bil(1.21 vs 0.60、p≦0.001)、AST(49.3 vs 29.5、p=0.001)、ALT(62.7 vs 23.2、p≦0.001)だった。この結果について森氏は「化学療法中に十分なドレナージが行われていれば、肝胆道系酵素の上昇はないと考えられる」と話した。Alb(p=0.203)やPlt(p=0.106)の低下もなかった。

 ICGR15(p=0.603)、ICGK(p=0.623)についても、NAC施行前後で有意差は認めなかった。
 
 術後合併症に特化したClavien-Dindo分類では、Grade3以上の合併症を7人に認めたが、NAC施行後のICGR15、ICGK、それらの変化のいずれとも相関は認めなかった。
 
 NACを完遂した43人中、10人の予定残肝組織の所見を検討したところ、線維化を9人で認めたものの、高度の線維化は1人のみだった。脂肪変性は6人、類洞拡張は9人に認められたが、ほとんどは軽度から中等で、60%以上の脂肪変性およびgrade2の類洞拡張は各1人だった。

 International Study Group of Liver Surgery(ISGLS)が定義する肝切除後肝不全のうち、臨床で問題となるGradeBの肝不全は2人(4.7%)に認めた。いずれもNAC施行後のICGR15が不良かつICGKが不良な患者で、1人はNAC施行後のICGの増悪を認めた患者、もう1人は肝生検で高度の線維化を認めた患者だった。

 森氏は「今回のレジメンによるNACは、十分な胆道ドレナージが行われていれば肝機能検査所見に与える影響は少ないと考えられる。しかし、肝不全を含む合併症の予測は困難であり、ICG不良例では肝生検なども用いた慎重な術式選択が必要と考えられる。今後、ゲムシタビン+シスプラチンを含むレジメンの検討も必要と考えている」と述べた。