癌の個別化治療には分子病理学的な診断が不可欠になっている。免疫組織化学(IHC)やDNAシークエンス、PCRなど、多くの手法が用いられているが、「検査の標準化(standardization)と有効性の評価(validation)が重要である」。7月3日から7日にオランダ・アムステルダムで開催された第14回世界肺癌学会(IASLC2011)で、University of Colorado Cancer CenterのFred R. Hirsch氏がプレナリーセッションで述べた。

 多くの研究で非小細胞肺癌(NSCLC)の予後予測因子と考えられる遺伝子が検出されているが、研究によって、その遺伝子は異なり、オーバーラップすることが少ない。それは患者コホートが違うほか、遺伝子発現を評価する方法やバイオインフォマティクスの手法が違うためであり、Hirsch氏は「validation研究が必要である」と訴えた。
 
 EGFR変異の検出には、DNAシークエンスやPCR、IHC、血中遊離T細胞や血中遊離DNAが用いられている。現在、ダイレクトシークエンスがゴールドスタンダードと考えられるが、肺癌のヘテロジェナイティを考慮すると、変異頻度が高いエクソン19やエクソン21での検出には、DxSスコーピオンなど、より精度の高いPCRが必要となる。またIHCにしても、変異部位あるいは報告によって感度や特異度が異なる。どの抗体を使うのか、臨床的に妥当なカットオフ値は何かなど、「標準化が必要である」とHirsch氏。

 FISH法によって検出されたEGFR遺伝子コピー数は、EGFR TKIへの効果と関連していることが報告されている。しかしFISH法によるEGFR陽性でのTKIの奏効率は最大でも68%であるのに対し、EGFR変異からみた場合の奏効率は最大で82%になるという。今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)ではD. Soulieres氏が、BR.21とSATURN試験のメタ解析の結果から、EGFR FISHは予後予測にはならず、エルロチニブ治療の患者選択には推奨しないことを述べている。一方、セツキシマブ治療ではFISH法による判定で奏効率、病勢制御率が異なる。そのためEGFR遺伝子コピー数については、特にEGFR野生型患者において、さらなる研究が必要であるとした。

 ALK遺伝子再構成については、ALK陽性患者におけるcrizotinibの効果が高いことが知られている。ALK陽性患者の検出には、FISH法、IHC、RT-PCR、DNAシークエンスが用いられ、これもどの方法が最適なのかが課題となっている。
 
 米国の肺癌遺伝子変異コンソーシアム(Lung Cancer Mutation Consortium)ではAKT1、BRAF、EGFR、HER2、KRAS、MEK1、NRAS、PIK3CA、ALKとMETの分析が行われ、腺癌での遺伝子発現に比べ、扁平上皮癌ではきわめて少ないことがわかっている。また米国Cancer Genomic Atlas ProjectやSquamous lung cancer consortiumでも、手法の有効性を評価し始めている。
 
 将来的には、KRAS変異のある肺癌にはソラフェニブ、EGFR変異にはエルロチニブ、ALK変異にはcrizotinib、cMET変異にはMetMAbなど、遺伝子に基づく個別化治療が考えられているが、そのためにもstandardizationとvalidationの重要性をHirsch氏は強調した。