anaplastic lymphoma kinase(ALK)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の耐性機構の検討で、EML4-ALK融合遺伝子を有する非小細胞肺癌(NSCLC)のALK-TKIに対する獲得耐性は、ALK遺伝子変異、上皮成長因子受容体(EGFR)シグナルの活性化、EGFRリガンド産生が、単独または複合的に発生することによると考えられる結果が示された。7月3日から7日にオランダ・アムステルダムで開催された第14回世界肺癌学会(IASLC2011)で、旭川医科大学病院呼吸器センターの佐々木高明氏が発表した。

 ALK遺伝子座の再構成がある肺癌患者では、ALK-TKIのcrizotinibの有効性が報告されている。しかし、ALK-TKIに対する獲得耐性により、治療の成功は限られる。

 耐性機構の解明はその後の有効な治療開発に重要なため、佐々木氏らはALK-TKIの耐性機構の検討を行った。ALK-TKIに耐性を示す腫瘍や細胞に遺伝子の変化が存在するか否かを検討し、相互的に活性化するシグナル経路についても評価した。

 検討により、3つの耐性機構の発生が示された。

 耐性機構の一つは、二次的なALK遺伝子変異である。肺炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)でcrizotinibによる治療中に進行し、RANBP2-ALK遺伝子の転座を有する患者において、二次的なALK遺伝子変異のF1174Lが同定された。F1174Lがシス型二重結合に存在すると、ALK遺伝子のリン酸化反応、細胞の増殖、下流のシグナル経路が増強・活性化する。

 crizotinibに獲得耐性を示したNSCLC患者から得た、EML4-ALK遺伝子変異を有する細胞株(DFCI076)では、別のALK遺伝子変異としてL1152Rが同定された。ALK遺伝子のリン酸化反応の亢進が認められた。この他に、L1196M、C1156Yも同定されている。

 EML4-ALK遺伝子変異を有するH3122細胞では、二次的な遺伝子変異が野生型である細胞と比べて、F1174L、L1152R、L1196M、C1156Yを認める細胞でcrizotinibの50%阻害濃度(IC50)が2〜3倍に上昇していた。

 別の耐性機構は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)シグナルの活性化である。DFCI076細胞において、顕著にEGFRシグナルが活性化していることが確認された。

 H3122細胞をALK阻害剤TAE684に曝露し、ALK-TKIに対する耐性を発生させたH3122-TR3細胞は、in vitroではTAE684とcrizotinibにともに耐性を示した。二次的なALK遺伝子変異は認められなかったが、EGFRシグナルの活性化と、EGFRを活性化するリガンドのEGFやamphiregulinがH3122細胞と比べて有意に多く産生されていた。このオートクラインのEGF産生を通し、EGFRシグナルが活性化されており、EGFRリガンドの産生も、耐性機構の一つと考えられた。

 佐々木氏は、NSCLCの腺癌の患者を対象として、crizotinibとpan-HER/erbB標的治療薬のPF0029804の併用療法を検討するフェーズ1試験が現在進行中であると話した。