東アジアの非喫煙者の肺腺癌患者の解析から、男性患者ではほぼ全員、女性患者では約80%において、EGFRKRASHER2ALK遺伝子のいずれか1つが活性化していることが示された。また環境喫煙(environmental tobacco smoke:ETS)は、性別による違いの原因の一つとなると考えられた。7月3日から7日にかけてオランダ・アムステルダムで開催されている第14回世界肺癌学会(IASLC2011)で、愛知県がんセンター中央病院呼吸器外科の須田健一氏が発表した。

 肺腺癌では、EGFR、KRAS、HER2、ALKの遺伝子変異の発現による分類が、発癌の理解と治療戦略の構築に重要である。KRASを除き、これらの遺伝子変異は非喫煙者で高い。最近の中国の解析では、対象の非喫煙者52人中、約90%にこれらの遺伝子変異が発現していたと報告されている(Sun, et.al. JCO.28:4616-4620,2010)。

 須田氏らは日本人のさらに大きなコホートにおいて、非喫煙者における肺腺癌の発生はこれらの遺伝子変異によりどの程度となるとみられるのか、さらにこれらの遺伝子変異の存在を予測する臨床的な因子があるのかを解析、検討した。

 対象は、肺腺癌の非喫煙者でEGFR、KRAS、HER2、ALKの4種の遺伝子検査に十分な腫瘍サンプルが得られた115人。対象中、男性は19人、女性は96人で、診断時の年齢中央値は65歳(範囲:26〜89歳)だった。ステージI/II/III/IVは、それぞれ79人、11人、22人、3人だった。

 遺伝子変異は対象の77%に発現していた。EGFR遺伝子変異は72人(63%)、KRAS遺伝子変異は6人(5%)、HER2遺伝子変異は4人(3%)、ALK遺伝子変異は6人(5%)で検出された。これらの遺伝子変異は相互排他的であった。

 遺伝子変異の発現頻度について、年齢(65歳以下と66歳以上)、病理学的ステージ(IとII〜IV)、腫瘍の大きさ(3cm未満と3cm以上)、CEA値(5ng/mL以下と5ng/mL超)で差はみられなかった。

 男性の非喫煙者では1人(5%)を除き、これらの遺伝子変異のいずれかが発現していたのに対し、女性の非喫煙者では、96人中26人(27%)でいずれの遺伝子変異も検出されず、有意差がみられた(p=0.042)。

 須田氏らのデータと前述の中国のデータを合わせた検討でも、同様の結果が得られた。男性の非喫煙者30人中では、これらの遺伝子変異のいずれかが発現していたのは29人(97%)で、検出されなかったのは1人(3%)のみだったが、女性の非喫煙者137人中では、106人(77%)と31人(23%)となった(p=0.019)。

 最近、EGFR遺伝子変異の発現はETSの患者で低く、職場よりも家庭のETSの患者で低いことが報告されている。須田氏らは、ETSの遺伝子変異に対する影響も検討した。ETSについて、肺腺癌と診断される10年前の状態のデータが入手できたのは65人だった。

 その結果、いずれの遺伝子変異も検出されなかったのは、ETSの19人中6人(32%)、ETSのない46人中7人(15%)だった。EGFR遺伝子変異の発現は、それぞれ63%と70%だった。ETSの曝露と遺伝子変異が検出されない状態は関連する傾向がみられたが、有意差はなかった。