HER2陽性の早期乳癌患者へのトラスツズマブ術後補助化学療法において、8年間の追跡の結果、1年投与群と2年投与群の無病生存期間(DFS)中央値に有意差がなかったことが報告された。また、トラスツズマブを1年投与した群の全生存期間(OS)とDFSは、投与しなかった群と比べ、有意に延長したことも示された。多施設国際共同臨床フェーズ3試験、HERA TRIALの結果について、HERA Studyチームを代表してRichard D. Gelber氏が、10月2日までウィーンで開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した。

 2005年に、HERA試験を含めた臨床試験の結果から、HER2陽性早期乳癌患者に対してトラスツズマブを1年間投与すると、投与しなかった群と比べてDFSを有意に改善することが示された。HERA試験は副次評価項目としてトラスツズマブを術後2年間投与すると1年間投与よりも効果が高いかどうかを検討することも設定されており、今回、その結果を報告した。HERA試験は、術後のトラスツズマブ投与期間を1年以上に設定した唯一の試験となる。

 HERA試験は、HER2陽性乳癌で、術前もしくは術後に化学療法と必要に応じて放射線療法を行った患者をランダム化し、観察群、トラスツズマブ1年投与群、2年投与群の3群に割り付けていた。今回の結果は、ランダム化から1年以上の無病生存が得られたトラスツズマブ投与例で、2年投与群1553人、1年投与群1552人。フォローアップ期間(中央値)が8年の時点での報告となる。

 患者背景は2群間でほぼ同じで、ホルモン受容体陽性患者の割合は約51%、35〜49歳が最も多く約45%。リンパ節転移の有無を問わず術前補助化学療法を行ったのは約11%、リンパ節転移陰性で術後補助化学療法を行ったのは約33%、リンパ節転移が1〜3カ所で術後補助化学療法を行ったのは約30%、リンパ節転移が4つ以上で術後補助化学療法を行ったのは約27%だった。術後補助化学療法のレジメンは、アントラサイクリン(タキサンなし)が約68%、アントラサイクリン+タキサンが約25%だった。

 8年間の追跡の結果、トラスツズマブ2年投与群のDFSイベント発生数は367、1年投与群は367で、ハザード比0.99(95%信頼区間:0.85-1.14、p=0.86)と差はなかった。8年DFS率は、1年投与群が76.0%、2年投与群が75.8%だった。ホルモン受容体別のDFSにおいても差は見られなかった。

 DFSイベントは、1年投与群、2年投与群ともに23.6%で見られた。最も多かったイベントは遠隔転移で、1年投与群で14.4%、2年投与群で13.4%、次に多かったのは局所再発でそれぞれ4.1%、3.7%だった。

 OSにおいても、1年投与群と2年投与群に有意差は見られなかった(ハザード比1.05、95%信頼区間:0.86-1.28、p=0.63)。8年生存率は1年投与群が87.6%、2年投与群が86.4%だった。

 有害事象は、一次心エンドポイント(NYHAクラスIII、IV、LVEF 50%未満で10%以上の低下、心臓死)の発生率は、1年投与群0.8%、2年投与群1.0%。二次心エンドポイント(左室駆出率が50%未満かつ左室拍出率が10%以上低下した場合で一次心エンドポイントを除く)は1年投与群4.1%、2年投与群7.2%だった。致死性有害事象は1年投与群1.1%、2年投与群1.2%だった。グレード3または4の有害事象が1つ以上みられたのは、1年投与群で16.3%、2年投与群で20.4%だった。

 これらの結果から、トラスツズマブの2年投与は1年投与に比べて利益が認められなかった一方、2次心エンドポイントやその他の有害事象は2年投与群で増加していたと結論した。また、HERA試験における観察群の半数がトラスツズマブ投与へとクロスオーバーしており、4年間の中間検討時にトラスツズマブの効果が減少していると報告されていたが、8年間追跡の結果では、1年投与群は観察群に比べて有意にDFS、OSが改善していた。このことからHER2陽性早期乳癌における1年間のトラスツズマブ投与は術後補助療法の一部として標準治療であるとした。

 さらに、ホルモン受容体陰性例で1年投与群の3年DFS率が83.8%だったのに対して2年投与群の3年DFS率が87.8%と短期での利益が見られたことから、ホルモン受容体の状態別に詳細な検討が必要とした。