HER2陽性早期乳癌に対するトラスツズマブによる術後補助化学療法において、投与期間6カ月群と12カ月群の無病生存期間(DFS)を比較したPHARE試験の結果、6カ月投与群は12カ月投与群に対して非劣性を示せなかった。フランスFranche Comte大学のXavier Pivot氏が、10月2日までウィーンで開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した。

 トラスツズマブによる術後補助化学療法を1年間行うと、DFSと全生存期間(OS)が有意に改善することが報告されている。一方、トラスツズマブによる術後補助化学療法を9週間行った場合も同等の再発予防効果が期待できることが示されている。また、トラスツズマブによる術後補助化学療法には心毒性の懸念がある。

 こうした背景の下、Pivot氏らは、心毒性の懸念を最小限に抑えた、より短いトラスツズマブ投与期間による術後補助化学療法の可能性を検討するため、トラスツズマブによる術後補助化学療法のDFSに対する効果について、投与期間6カ月と12カ月を比較する試験を行った。DFSはランダム化から最初のイベントまでとし、イベントは局所または転移再発、対側乳癌発症、乳房以外の腫瘍、全死亡とした。副次評価項目は心毒性、遠隔転移発症までの期間、全生存期間(OS)とした。

 試験デザインは、トラスツズマブを6カ月間投与した後にランダム化し、12カ月まで投与する群とトラスツズマブ投与を中止する群に割り付けた。試験は非劣性を評価するデザインで、ハザード比の95%信頼区間が1.15を超えなかった場合、非劣性とした。

 対象は、2006年5月30日〜2010年7月9日までに登録した転移のない切除可能なHER2陽性乳癌患者3384人。腋窩リンパ節転移は陽陰性両方で、腫瘍径10mm以上。少なくとも4サイクル以上の化学療法を受けている患者とした。

 トラスツズマブを6カ月投与した群(1690人)、12カ月投与した群(1690人)の患者背景は、2群間でほぼ同様で、年齢中央値は54〜55歳、腫瘍サイズが0〜2cmが5割強、2〜5cmが4割弱。リンパ節転移陰性は54.7〜55.4%、エストロゲン受容体陽性は57.6〜58.8%。化学療法においてアントラサイクリン+タキサンを選択している患者は72.7〜73.9%、アントラサイクリンを用い、タキサンを使わなかったのは15.5〜15.9%。化学療法とトラスツズマブを同時に投与したのは57.7〜57.8%、化学療法に続いてトラスツズマブを投与したのは42.2〜42.3%だった。放射線療法施行例は87.7〜88.2%、ホルモン療法施行例は50.2〜50.6%だった。トラスツズマブの平均投与期間は6カ月群が6.3カ月、12カ月群が11.8カ月だった。

 心毒性については、心イベント発症率が12カ月群5.7%、6カ月群1.9%で、有意に6カ月群は少なかった。左室駆出率(LVEF)50%未満は、12カ月群6.3%、6カ月群4.7%と6カ月群で有意に少なかったが(p=0.04)、LVEF 50%未満で10%以上低下したのは12カ月群4.8%、6カ月群3.6%と有意な差はなかった。

 フォローアップ期間(中央値)は42.5カ月で、主要評価項目のイベント発生率は、12カ月群10.4%、6カ月群13.0%だった。最も多かったのは遠隔再発で、12カ月群6.4%、6カ月群8.3%だった。1年DFS率は12カ月群97.0%、6カ月群95.5%、4年DFS率は12カ月群が87.8%、6カ月群84.9%。12カ月群のイベント数は176、6カ月群のイベント数は219で、ハザード比は1.28(95%信頼区間:1.05-1.56、p=0.29)となり非劣性は示されなかった。

 さらに、層別解析を行い、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、エストロゲン受容体、化学療法と同時投与か逐次投与か、などで検討したが、有意な因子は見いだされなかった。

 また、OSについては、12カ月群のイベント数は66、6カ月群は93で、ハザード比1.47(95%信頼区間:1.07-2.02)だった。1年OS率は12カ月群99.9%、6カ月群99.3%、4年OS率は、12カ月群が95.0%、6カ月群が93.1%だった。

 これらの結果についてPivot氏は、「非劣性は示されなかった。試験では12カ月間投与した群の方が良好な傾向が示された。心毒性は6カ月投与群が良好だった」とまとめ、多変量解析の結果は今年のサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で発表する予定であること、別のトラスツズマブによる補助療法の試験の結果が来年報告される予定であることを紹介した。