HER2陽性転移性乳癌患者に対し、トラスツズマブDM1(T-DM1)はカペシタビンとラパチニブ併用療法に比べ、全生存期間(OS)を有意に改善し、約6カ月延長させることが、フェーズ3試験EMILIAの最新解析で明らかになった。カナダSunnybrook Odette Cancer CenterのSunil Verma氏らが、オーストリア・ウィーンで9月28日から開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した。

 T-DM1は、抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブと微小管重合体阻害剤誘導体のDM1を結合させた抗体-薬剤複合体。

 EMILIA試験は、HER2陽性の局所進行または転移性乳癌で、トラスツズマブとタキサン系抗癌剤による治療歴がある患者を対象に、T-DM1を投与する群とカペシタビンとラパチニブを併用投与する群を比較した。
 
 T-DM1は3週おきに3.6mg/kgが投与された。カペシタビン+ラパチニブ群では3週おきにカペシタビン1000mg/m2を1日2回、第1日から第14日まで投与し、ラパチニブ1250mg/日を連日投与した。

 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS:独立審査委員会による判定)、OS、安全性とし、副次評価項目は、PFS(担当医師による判定)、奏効率、病勢制御率と設定された。

 PFSの最終結果とOSの中間解析の結果は、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告されている。フォローアップ期間中央値はカペシタビン+ラパチニブ群(488人)は12.4カ月、T-DM1群(490人)は12.9カ月だった。
 
 PFSの中央値は、カペシタビン+ラパチニブ群は6.4カ月、T-DM1群は9.6カ月、ハザード比は0.650(95%信頼区間:0.55-0.77)、p<0.0001で、カペシタビン+ラパチニブ群で有意に延長した。PFSのサブグループ解析でもT-DM1群の有用性が示された。中間解析でのOS中央値は、カペシタビン+ラパチニブ群は23.3カ月、T-DM1群は未到達で、ハザード比0.621(同:0.48-0.81)、p=0.0005だった。
 
 今回は2012年7月31日時点までのデータから、OSの2回目の中間解析の結果が報告された。フォローアップ期間中央値はカペシタビン+ラパチニブ群は18.6カ月、T-DM1群は19.1カ月だった。なおOSの最終結果は2014年になる見込み。
 
 最新のOS中央値は、カペシタビン+ラパチニブ群が25.1カ月であるのに対し、T-DM1群は30.9カ月、ハザード比が0.682(95%信頼区間:0.55-0.85)、p=0.0006と、有意にT-DM1群で優れていた。1年生存率は、カペシタビン+ラパチニブ群が78.4%、T-DM1群が85.2%、2年生存率はそれぞれ51.8%、64.7%だった。ただ約3年時点では2つの生存曲線は重なっていた。

 有害事象(AE)はカペシタビン+ラパチニブ群で97.7%、T-DM1群は95.9%に見られ、グレード3以上のAEはそれぞれ57%、40.8%だった。治療中止につながるAEは10.7%、5.9%、試験薬投与30日以内の死亡につながるAEは0.8%(4人)、0.2%(1人)だった。心毒性については、心機能不全がカペシタビン+ラパチニブ群で3.1%(15人)、T-DM1群は1.8%(9人)で、グレード3がそれぞれ0.4%(2人)、0.2%(1人)だった。このため「T-DM1の安全性プロファイルはカペシタビン+ラパチニブよりも良好である」とした。