外科切除術を行った胃癌患者において、HER2陽性は独立した予後不良因子であることが報告された。大阪大学消化器外科学の黒川幸典氏が、9月28日からウィーンで開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した

 ToGA試験の結果から、HER2発現は進行胃癌患者に対するトラスツズマブの効果予測因子であることが示された。しかし、胃癌患者におけるHER2発現と予後との関係については明らかでない。そこで黒川氏らは、胃癌患者を対象に、HER2発現の予後予測能について検討した。

 対象は、2000年から2006年に、大阪大学消化器外科と関連病院において外科的切除術を行った胃癌患者1153人。化学療法または放射線療法による治療歴のない、全ステージの胃癌患者とした。追跡期間中央値は62カ月。病理学的ステージは、ステージIが482人、ステージIIが256人、ステージIIIが267人、ステージIVが148人。

 ホルマリン固定パラフィン包埋検体は11施設から集め、第三者機関の病理医が免疫組織染色(IHC)法とFISH法でHER2発現状態を判定した。IHC法では4つのグレード(0、1+、2+、3+)で評価し、IHC法で2+だった場合のみFISH法による評価を実施した。IHC法で3+もしくは、IHC法で2+かつFISH陽性だった場合にHER2陽性と定義した。IHC法で0、1+またはIHC法で2+かつFISH法で陰性だった場合はHER2陰性とした。
 
 その結果、HER2陽性患者の割合は全体の15.7%(181人)だった。HER2陽性患者の内訳は、IHC法で2+かつFISH法陽性が1.6%(19人)、IHC法で3+が14.1%(162人)。HER2陰性患者(972人)の内訳は、IHC法で0が57.1%(658人)、IHC法で1+が18.0%(208人)、IHC法で2+かつFISH法陰性が9.2%(106人)だった。
 
 患者背景で有意差が見られたのは、組織型と病理学的ステージで、HER2陽性グループでは分化型が多く、ステージIVが多かった。

 登録患者全体を対象に全生存率を検討した結果、HER2陽性グループが有意に低く、ハザード比は1.56(95%信頼区間:1.23-1.99)だった。

 ステージ別にOSを解析したところ、ステージI(ハザード比2.00、95%信頼区間:1.11-3.58)、ステージII(同1.86、1.00-3.47)とHER2陽性グループの全生存率は有意に低かった。ステージIIIではハザード比1.48、ステージIVではハザード比1.43と、全生存率はHER2陽性グループが低い傾向にあったが、それぞれp=0.079、p=0.084と統計学的に有意ではなかった。

 多変量解析を行った結果、有意な予後不良因子としてHER2陽性が見いだされた(ハザード比1.56、95%信頼区間:1.21-2.01、p=0.001)。そのほか、65歳超(ハザード比2.03、95%信頼区間:1.64-2.51)、男性(同1.30、1.03-1.64)、上部の腫瘍(1.39、1.12-1.74)、病理学的ステージIIIまたはIV(6.07、4.89-7.54)が見いだされた。
 
 これらの結果から黒川氏は、「HER2発現は切除後胃癌症例における独立した予後不良因子であることが明らかになった」と語った。