日本人の局所進行食道癌に対するS-1シスプラチンを用いた化学放射線療法は安全かつ有効である可能性がフェーズ2試験から示された。名古屋医療センター消化器科の岩瀬弘明氏が、9月28日からウィーンで開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した。

 切除不能の食道癌に対し、5-FU/シスプラチンを用いた根治的化学放射線療法が行われているが、その効果は生存期間中央値で14.1カ月、局所制御率は5割以下で、さらに5-FUは静注であるなど患者のQOLが低下する。そこで、岩瀬氏らは経口投与であり、消化器症状の少ないS-1を用いたレジメンについて検討した。

 今回、岩瀬氏らは、日本人のステージII、IIIの局所進行食道癌に対象に、S-1+シスプラチンの化学放射線療法の安全性と有効性を検討するフェーズ2試験を行った。

 対象は、未治療の局所進行食道癌患者。20歳以上、ECOG PSが0または1で、12週間以上の生存が見込まれ、臓器機能が保持された患者とした。主要評価項目は、抗腫瘍効果、臨床学的毒性。副次評価項目は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)とした。

 化学放射線療法は、フェーズ1試験の結果を踏まえ、有害事象を最小限に抑えるために1コース目と2コース目の間を2週間あけることとした。放射線療法の1コースは、30Gyを1日2Gy、週5日照射を3週間とした。S-1(80mg/m2/日)は1日目から14日間連続で毎日投与し、8日目にシスプラチン点滴を24時間かけて行った(70mg/m2)。S-1を服用できない場合は粉末状にして投与した。奏効した患者は最低2コース以上行うこととした。

 登録患者83人(うちステージIIが12人、ステージIIIが71人)の背景は、年齢中央値は68歳(範囲:51-83)、主要部位は上部が9人、中央が69人、下部が5人。腫瘍径中央値は7cm(範囲:3-16cm)。

 患者の92.7%(77人)が、S-1+シスプラチンの化学放射線療法を完遂した。追跡期間中央値はステージIIが47.0カ月、ステージIIIが67.2カ月。

 血液学的毒性では、グレード3または4の好中球減少が38.6%、血小板減少が13.3%だった。非血液学的毒性で最も多かったのはグレード2の悪心で32.5%、嘔気と食欲不振がそれぞれ19.3%、食道の痛みと口腔粘膜炎がそれぞれ16.9%ずつだった。

 RECIST基準による独立評価委員会による評価の結果、ステージIIにおける完全奏効(CR)は91.7%、部分奏効(PR)は8.3%だった。ステージIIIでは、CRが67.6%、PRが24.5%、安定(SD)が5.6%だった。

 ステージIIでは再発は見られなかったが、ステージIIIで完全奏効が得られた48人のうち21人(43.8%)が再発した。

 OS中央値は、ステージIIが7.0年(95%信頼区間:5.8-7.6)、ステージIIIが2.6年(同2.0-3.4)だった。PFS中央値は、ステージIIが6.6年(同5.8-7.6)、ステージIIIが1.6年(同0.9-2.1)だった。

 岩瀬氏は、「S-1+シスプラチンの組み合わせによる化学放射線療法は有効で、忍容性があることが示された。また、従来の化学放射線療法の5-FUをS-1に変更したことで、これまで報告されてきたステージIIIの全生存期間が2.6年となり、2倍以上延長した。経口薬になったことで患者のQOL向上も期待できる」と同治療のメリットを語った。