HER2陽性乳癌患者に対する術式は、診断時の腫瘍サイズやホルモン受容体(ER)の状態などの腫瘍特性で主に決定されており、効果が高い術前補助療法を行っても乳房温存術の向上にはつながっていないことが、ラパチニブとトラスツズマブ、パクリタキセルによる術前補助療法を検討した国際共同フェーズ3試験、NeoALTTO試験の解析で明らかになった。イタリアEuropean Institute of OncologyのCarmen Criscitiello氏らが、オーストリア・ウィーンで9月28日から開催されている第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で発表した。

 NeoALTTO試験は、HER2陽性で腫瘍径2cm超の原発性乳癌患者を対象に、術前補助療法として、ラパチニブとパクリタキセルの併用(L群)、トラスツズマブとパクリタキセルの併用(T群)、ラパチニブとトラスツズマブ、パクリタキセルの併用(L+T群)を比較した。

 その結果、主要評価項目である手術時の病理学的完全奏効(pCR)率は、L群が24.7%、T群が29.5%、L+T群は51.3%だった。ところが、乳房温存術が施行された率はそれぞれ42.9%、38.9%、41.4%と大きな違いはなく、術前補助療法の高い抗腫瘍効果は乳房温存術の頻度には反映されていなかった。

 そこで研究グループは、術式に影響を与える因子として、年齢、多中心性(multicentricity)/多発性(multifocality)、診断時の予定術式、手術前の画像所見、腫瘍特性、地域などを検討した。
 
 解析対象は429人。このうちpCRに達したのは160人(37%)だった。乳房切除術が242人(57%)、乳房温存術が187人(43%)であった。また手術前の抗腫瘍効果別には、完全奏効の患者では乳房温存術は47%、乳房切除術は53%、部分奏効の患者ではそれぞれ45%、55%、病勢進行の患者では42%、58%だった。
 
 ロジスティック回帰モデルで、術前補助療法後の乳房温存術に関連する因子を分析した結果、診断時の予定術式が乳房温存術の場合は乳房温存術が多く、反対に腫瘍の多中心性/多発性あり、ER陰性では乳房温存術は少なかった。
 
 また術前の予定術式を因子から除いて分析すると、乳房温存術は腫瘍の多中心性/多発性あり、ER陰性で少なかった。一方、TNM分類のT4に比べT2では乳房温存術が多く、発展途上国に比べ先進国では多いことが示された。

 これらのことから、「術前補助療法後の術式の決定は、診断時の腫瘍特性に主に基づいており、術式を決める因子は、診断時の予定術式、腫瘍の多中心性/多発性、ERの状態である」とした。また診断時の予定術式は、地域や腫瘍サイズと関連しているとした。

 そして、「術前補助療法で効果があった患者において、乳房温存術の役割に関し、明確なコンセンサスが求められる」とCriscitiello氏は述べ、それにより術前補助療法の進歩が乳房温存術の施行率の向上につながるだろうとした。