未治療進行膵癌患者に対し、低酸素標的治療薬TH-302ゲムシタビンの併用投与は、ゲムシタビン単独投与と比べて無増悪生存期間(PFS)を延長することが報告された。9月28日からウィーンで開催された第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で、Mayo ClinicのMJ Borad氏が発表した。

 腫瘍組織は、正常組織と比べて酸素分圧が低下している。例えば正常の乳房組織の酸素分圧が52mmHgであるのに対し、乳癌では10mmHgと低下していることが示されている。膵癌でも酸素分圧が低下しており、これまでの報告では正常組織では57mmHgであるのに対し、膵癌組織では2mmHgにまで低下していることが示されている。こうした環境の違いを生かし、膵癌への新たな治療法として、低酸素状態を標的とした治療薬であるTH-302の開発が進められている。
 
 TH-302は、低酸素状態になると還元酵素の働きにより切断され、DNAアルキル化剤のブロモイソホスファミドマスタード(Br-IPM)を放出する構造を持つ低酸素を標的としたプロドラッグ。これまでの試験から、良好な薬物動態、代謝と毒物プロファイルが報告されている。

 未治療進行膵癌47人を対象とした単アームの容量増量試験において、奏効率は21%、PFS中央値は5.9カ月だった。さらに、用量強度は低用量ほど良好であることが示されているが、用量240mg/m2では奏効率0%、PFSは5.4カ月だったのに対し、340mg/m2では奏効率33%、PFSは7.4カ月と高用量でより効果が高いことが示されている。単剤投与での最大耐用量は575mg/m2であることが示されている。

 今回、報告されたのは多施設共同のフェーズ2試験(TH-CR-404試験)の結果で、未治療の進行膵癌患者を対象に、ゲムシタビン単独療法とTH-302+ゲムシタビン併用療法の安全性、有効性を比較検討したもの。

 対象は、ECOG PSが0または1の局所進行または転移性膵癌患者214人。ゲムシタビン単独療法群 (1000mg/m2、以下G群)、ゲムシタビン(G)+TH-302 240mg/m2、ゲムシタビン(G)+TH-302 340mg/m2の3群に1:1:1に無作為に割り付けた。G群については、病勢進行した場合にG+TH-302群(240mg/m2または340mg/m2)へのクロスオーバーを認めた。28日を1サイクルとし、ゲムシタビン、TH-302はそれぞれ1、8、15日目に投与した。

 主要評価項目は、PFSと安全性。副次評価項目は、奏効率、CA19-9変化率、全生存期間(OS)、G+TH-302の2群(240mg/m2または340mg/m2)における評価項目の類似性。

 患者背景については、3群に大きな差はなかった。年齢中央値は63〜67歳、男性割合は57〜62%、局所進行手術不能例の割合は20〜27%。PS 0は30〜45%、肝臓転移例は57〜67%、肺転移例が14〜20%。

 投与サイクル数(中央値)は、G群4.5サイクル(範囲1-16)、G+TH302 240群5.5サイクル(範囲1-17)、G+TH302 340群6.4サイクル(範囲1-21)だった。6サイクル後のゲムシタビンの累積用量強度は72〜88%だった。

 TH-302を投与した群の有害事象について見ると、G群と比べ、発疹、口内炎、グレード3または4の血小板減少症や好中球減少症が増加した。発疹はG群(69人)が16%、G+TH-302 240群(71人)が42%、G+TH-302 340群(74人)が47%、口内炎はそれぞれ7%、18%、42%。グレード3または4の血小板減少症は11%、39%、63%、グレード3または4の好中球減少症は31%、56%、60%だった。しかし、治療中断に至る有害事象は増加しなかった。

 主要評価項目のPFS中央値は、G群が3.6カ月に対し、G+TH-302 240群が5.6カ月、G+TH-302 340群が6.0カ月で、G群とG+TH-302 340群との差が有意だった(ハザード比0.589、95%信頼区間:0.40-0.88、p=0.008)。

 RECISTによる最良総合効果は、G群が10%に対し、G+TH-302 240群が17%、G+TH-302 340群が26%となり、G+T340群においてのみ有意差が確認された(p=0.021)。G+T240群においては、部分奏効(PR)が17%、安定(SD)が58%、病勢進行(PD)が18%、G+T340群においては、完全奏効(PR)が3%、PRが23%、SDが50%、PDが16%だった。

 OS中央値は、G群が6.9カ月だったのに対し、G+TH-302 240群が8.7カ月、G+TH-302 340群が9.2カ月で、いずれも有意な差ではなかった。

 CA19-9値の減少率が90%超だった患者の割合は、G群が16%、G+TH-302 240群が24%、G+TH-302 340群が32%。CA19-9の反応が得られるまでの期間は、G群が1.8カ月だったのに対し、他の2群は0.9カ月だった。

 6カ月生存率、12カ月生存率は、G群がそれぞれ57%、26%だったのに対し、G+TH-302 240群が69%、37%、G+TH-302 340群が73%、38%だった。G+TH-302 340群の6カ月生存率がG群の6カ月生存率に比べて有意に良好だった。。

 クロスオーバーを認めた患者について解析した結果、クロスオーバー後のPFS中央値はG+TH-302 240群(14人)が1.8カ月、G+TH-302 340群(12人)が2.9カ月だった。クロスオーバー前のPFSはG+TH-302 240群が3.2カ月、G+TH-302 340群は3.6カ月だった。OS中央値はそれぞれ2.6カ月、13.4カ月となり、2群間に有意な差が見られた(ハザード比0.448、95%信頼区間:0.23-0.87、p=0.010)。

 Borad氏はこれらの結果を踏まえ、今後、ゲムシタビン単独群を対照に、ゲムシタビン+TH-302群 340mg/m2の安全性・有効性を検討するためのフェーズ3試験を行う予定であると語った。