進行悪性胸膜中皮腫で前治療の白金系抗癌剤とペメトレキセドによる化学療法が失敗した患者において、プラセボと比較してボリノスタットは全生存期間(OS)を有意に延長できなかったことが、大規模なフェーズ3試験から示された。9月23日から27日までスウェーデン・ストックホルムで開催されたThe 2011 European Multidisciplinary Cancer Congress(EMCC)で、米Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのLee M. Krug氏が発表した。
 
 ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬のボリノスタットは、遺伝子発現と蛋白活性を変化させる。悪性胸膜中皮腫患者を対象としたフェーズ1試験では、ボリノスタット単剤の投与により、治療歴がある患者13人中、2人が奏効は未確認ながら21カ月または27カ月生存し、4人は安定状態が4〜13カ月持続した。
 
 Krug氏らは、進行悪性胸膜中皮腫の患者を対象として、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照、フェーズ3の無作為化試験(VANTAGE014)を行い、ボリノスタットの投与と支持療法(BSC)を行う群(ボリノスタット群)とプラセボの投与とBSCを行う群(プラセボ群)を比較検討した。
 
 VANTAGE014試験で適格としたのは、病理学的に確認され、modified RECIST基準に基づく測定可能な病変を有し、2つ以下のレジメンによる全身療法の治療歴がある患者。21日を1サイクルとして、ボリノスタット300mgまたはプラセボを1日2回、各週で3日間ずつ投与した。
 
 同試験の主要評価項目は全生存期間(OS)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率、胸膜中皮腫用に修正した肺癌症状尺度(Lung Cancer Symptom Scale:LCSS-Meso)の呼吸困難スコア、努力性肺活量(FVC)とした。
 
 23カ国の125施設から661人の患者が登録され、ボリノスタット群に329人(男性86%、年齢中央値64歳)、プラセボ群に332人(同81%、65歳)が割り付けられた。ボリノスタット群とプラセボ群で、Karnofsky performance statusが80%を超えた患者はそれぞれ50%と49%、組織型が上皮型だったのは83%と81%だった。前治療を1回受けたのは、両群ともに77%だった。
 
 OSの中央値は、ボリノスタット群31週、プラセボ群27週、ハザード比は0.98となり、ボリノスタットによるOSの有意な延長は示されなかった(p=0.858)。3回目の中間解析時およびその後もOSの有意差は認められなかった。ただし、3回目の中間解析の前に行われた生存効果と登録時点の相互作用については、両側検定でp値が0.019だった。
 
 PFSの中央値は、ボリノスタット群6.3週、プラセボ群6.1週で、ハザード比は0.75となり、ボリノスタット群で良好だった(p<0.001)。
 
 放射線学的な奏効は、ボリノスタット群の2人、プラセボ群の1人に認められた。ベースラインから12週時までのLCSS-Mesoの呼吸困難のスコアやFVCに、統計学的な有意差はみられなかった。
 
 グレード3以上の有害事象で、ボリノスタット群で多く発現したのは、疲労感、嘔気、脱水などだった。