S-1パクリタキセルの併用療法を行い、その後、FEC療法(5-FU、エピルビシン、シクロホスファミド)を行う術前化学療法は、日本人乳癌患者、特にER/PgR陽性、HER2陰性(luminal A)の乳癌患者において、病理学的奏効率が高く、安全性も認められることが、フェーズ2試験で明らかになった。9月23日から27日までスウェーデン・ストックホルムで開催されたEMCC2011で、帝京大学医学部附属病院外科の池田正氏らが発表した。

 術前化学療法によって乳房温存率は高くなるが、luminal Aタイプの乳癌では奏効率が低いことが知られている。一方、5-FU誘導体による術後補助療法はER陽性乳癌に効果的であることが報告されている。そこで、パクリタキセル週1回投与に5-FU誘導体であるS-1を加え、続いてFEC療法を行うレジメンが検討された。

 対象は、手術可能なステージ2A、2B、3A、3B、3Cの乳癌患者。パクリタキセルは60mg/m2を第1日、第8日、第15日に、S-1は80mg/m2を第1日から第14日に、それぞれ4週おきに投与し、これを4サイクル行った。FEC療法では、5-FUは500mg/m2、エピルビシンは90mg/m2、シクロホスファミドは500mg/m2を第1日に、3週毎に投与し、これを4サイクル行った。

 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)率とした。副次評価項目はpCR+ほぼ完全奏効(near pCR)の比率とした。なおpCR は組織学的効果判定のGrade 3にあたり、癌細胞の完全な消失もしくは原発巣の乳管内病変のみの残存とした。near pCRはGrade 2bで、原発巣にごく少量の癌細胞が残存している状態とした。

 試験には25人が登録された。年齢中央値は44歳(28-65歳)、閉経前女性が80%(20人)を占めた。腫瘍径の平均は4.4cm(2.5-10.0cm)。ER陽性、PgR陽性、HER2陰性が17人(68%)、ER陽性、PgR陰性、HER2陰性が4人(8%)だった。

 この結果、pCRは6人(24%)、near pCRは5人(20%)だった。臨床的効果はCRが15人(60%)、PR(部分奏効)が8人(32%)、SD(病勢安定)が2人(8%)であった。またER陽性、HER2陰性の21人では、pCRが4人(19%)、near pCRが5人(24%)だった。

 グレード3/4の有害事象は、S-1とパクリタキセルの併用療法では、好中球減少が3人に見られ、発熱性好中球減少が1人、悪心・嘔吐が1人、下痢が1人だった。このほかS-1とパクリタキセル治療中に、グレード1/2のしびれ(12人)、湿疹(9人)、疲労感(9人)、口内炎(7人)が見られた。FEC療法ではグレード3/4の好中球減少が24人に、発熱性好中球減少が2人、疲労感が2人に認められた。

 これらの結果から、池田氏は「Luminal A乳癌にはホルモン療法のみの治療が勧められているが、術前療法としてS-1を含む化学療法が考慮できるのではないか」と話した。