未治療のHER2陽性転移性乳癌患者に対し、抗体-薬剤複合体であるトラスツズマブ-DM1(T-DM1、trastuzumab emtansine)が、トラスツズマブとドセタキセルの併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)を41%改善することが、フェーズ2試験(TDM4450g)の最新結果で明らかになった。9月23日から27日までスウェーデン・ストックホルムで開催されているEMCC2011で、米University of California, Los AngelesのSara Hurvitz氏らが発表した。

 T-DM1は、抗HER2モノクローナル抗体製剤トラスツズマブに、微小管重合阻害剤誘導体であるDM1を結合させた抗体-薬物複合体(ADC)。

 フェーズ2試験は、HER2陽性の転移性乳癌患者137人を対象に、T-DM1単剤を投与する群(T-DM1群)と、トラスツズマブとドセタキセルを併用投与する群(H+T群)を比較した。主要評価項目はPFSと安全性、主な副次的評価項目は全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間、完全奏効(CR)と部分奏効(PR)、6カ月以上の安定(SD)を合わせた臨床的有益率(CBR)とした。

 T-DM1群では、T-DM1は3.6mg/kgを3週おきに投与した。H+T群では、トラスツズマブを初回投与は8mg/kg、その後は6mg/kgを3週おきに投与し、ドセタキセルは75 mg/m2または100mg/m2を3週間おきに投与した。いずれも病勢進行(PD)または許容できない毒性が発現するまで継続した。PDとなった後、併用群からT-DM1群へのクロスオーバーを許可した。

 今回の結果は、T-DM1群へのクロスオーバー前の2010年11月15日までの臨床データに基づいている。この時点で、治療継続中の患者はH+T群で21.4%だが、T-DM1群は43.3%であり、治療期間の中央値がH+T群でトラスツズマブは8.1カ月、ドセタキセルは5.5カ月だが、T-DM1群は10カ月だった。

 フォローアップ期間の中央値は、H+T群が13.5カ月、T-DM1群が13.8カ月だった。PFS中央値はH+T群が9.2カ月、T-DM1群が14.2カ月、ハザード比は0.594(95%信頼区間:0.364-0.968)、p=0.0353だった。

 奏効率はH+T群が58%、T-DM1群は64.2%で、CRはそれぞれ4.3%、10.4%、PRは53.6%、53.7%、臨床的有益率は81.2%、74.6%だった。奏効期間中央値はH+T群が9.5カ月、T-DM1群では達していない。

 グレード3以上の有害事象は、H+T群が89.4%であるのに対し、T-DM1群では46.4%と少なかった。有害事象による治療中止もH+T群が28.8%、T-DM1群は7.2%であり、有害事象による死亡が各群1人だった。重篤な有害事象はそれぞれ25.8%、18.8%だった。

 またグレード3以上の好中球減少が、H+T群では60.6%だが、T-DM1群では5.8%だった。非血液毒性(全グレード)では、H+T群では脱毛が66.7%、T-DM1群では4.3%、下痢がそれぞれ45.5%、15.9%、末梢性浮腫が43.9%、10.1%だったが、AST上昇はH+T群が6.1%に対し、T-DM1群は39.1%だった。T-DM1群で心毒性(LVEFの低下)は見られなかった。

 これらの結果から「T-DM1によるPFSの改善は、忍容性や治療期間、奏効期間の改善による結果だろう」とHurvitz氏は述べた。T-DM1についてはHER2陽性乳癌対象に3つのフェーズ3試験(MARIANNE、EMILIA、NCT01419197)が進行している。