抗HER-2モノクローナル抗体のトラスツズマブと微小管重合体阻害剤誘導体のDM1を結合させた抗体-薬剤複合体のトラスツズマブDM1(T-DM1)は、HER-2陽性の転移性乳癌患者に対するファーストライン治療として、トラスツズマブとドセタキセルの併用療法と同等の有効性を示し、安全性プロファイルは優れていることが、フェーズ2試験(TDM4450g)の中間解析から明らかになった。10月8日から12日にかけてイタリア・ミラノで開催された第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、米Mayo ClinicのEdith.A. Perez氏が発表した。

 T-DM1の単群のフェーズ2試験では、HER-2陽性の転移性乳癌で治療歴のある患者に有効性を示し、安全性プロファイルも良好であることが示されている。

 Perez氏らは、HER-2陽性の転移性乳癌で転移に対する化学療法の治療歴がない患者を対象として、トラスツズマブとドセタキセルの併用療法とT-DM1単剤の有効性と安全性を比較する無作為化非盲検のフェーズ2試験を行った。今回は、登録完了から4カ月の時点における中間解析の結果が報告された。

 患者登録は2008年9月〜2009年12月に行われ、今回の解析では2010年4月2日までに得られたデータを対象とした。有効性と安全性についてはクロスオーバー以前のデータを対象としている。

 対象は、トラスツズマブとドセタキセルの併用群70人(年齢中央値52.0歳)、T-DM1群67人(同55.0歳)。トラスツズマブの治療歴があるのは併用群25.7%、T-DM1群19.4%だった。トラスツズマブとタキサン系薬剤の両方またはいずれかの治療歴があるのは併用群44.3%、T-DM1群35.8%だった。

 併用群では、トラスツズマブは1サイクル目に8mg/kg、2サイクル目以降に6mg/kgを3週毎に投与し、ドセタキセルは75または100mg/kgを各サイクルの1日目に投与した。T-DM1群では、T-DM1 3.6mg/kgを3週毎に投与した。投与は病勢進行(PD)または受容不能な毒性が発現するまで継続し、PDとなった後、併用群からT-DM群へのクロスオーバーを許可した。

 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と安全性、副次的評価項目は客観的奏効率(ORR)、完全奏効(CR)と部分奏効(PR)と6カ月以上の安定(SD)を合わせた臨床的有効率(CBR)、全生存期間(OS)などとした。

 登録完了から4カ月の時点でのフォローアップ期間の中央値は、併用群6.1カ月T-DM1群 5.9カ月となった。治療継続中の患者は併用群58.6%、T-DM1群65.7%だった。

 ORRは併用群41.4%、T-DM1群47.8%だった。CRとPRの割合は、併用群では1.4%と40.0%、T-DM1群では4.5%と43.3%となった。CBRは、併用群57.1%、T-DM1群55.2%だった。

 本試験で1回以上治療を受けた患者は併用群68人、T-DM1群67人で、投与量の減量が必要となったのは併用群23.5%、T-DM1群19.4%だった。

 グレード3以上の有害事象は、併用群75.0%、T-DM1群37.3%に発現した。死亡や生命を脅かす重篤な有害事象の発現は、併用群22.1%、T-DM1群19.4%であった。

 T-DM1群で多かった全グレードの有害事象は、嘔気47.8%、疲労感46.3%、発熱35.8%で、併用群でのこれらの発現は、39.7%、46.2%、20.6%だった。一方、併用群で多かった全グレードの有害事象は、脱毛66.2%、好中球減少57.4%、下痢45.6%で、T-DM1群でのこれらの発現は、1.5%、7.5%、10.4%だった。

 併用群で10%以上に発現したグレード3以上の好中球減少や白血球減少は、T-DM1群では発現しなかった。グレード3の血小板減少、ASTおよびALTの上昇は、併用群と比べてT-DM1群で多く発現したが、いずれも10%未満であった。

 心毒性についても、T-DM1群は併用群と比べてリスクの上昇はみられなかった。また今回の対象において、T-DM1に関する新たな有害事象の徴候について報告はなかった。

 PFSの最終解析や1年の時点のOSなどについては、2011年に発表される予定だ。