HER-2陽性の転移性乳癌患者において、トラスツズマブとS-1の併用療法は安全に施行可能で有効性についても有望であることが、フェーズ1試験の結果から示された。10月8日から12日にかけてイタリア・ミラノで開催された第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科学の高島勉氏が発表した。

 転移性乳癌患者の約20%はHER-2を過剰発現する。このような患者の予後は、トラスツズマブと化学療法の併用により改善がみられている。しかし、トラスツズマブとカペシタビンの併用療法の有効性は報告されているものの、それ以外のフッ化ピリミジン系抗腫瘍薬とトラスツズマブの併用療法に関する試験は行われていなかった。

 高島氏らは、HER-2陽性の転移性乳癌患者を対象として、フェーズ1試験でS-1とトラスツズマブの併用療法の安全性と有効性を評価し、フェーズ2試験に向けての推奨用量(RD)を決定することとした。主要評価項目は、RDの決定と安全性の評価、副次的評価項目は奏効率(RR)と病勢コントロール率(DCR)とした。

 トラスツズマブは毎週投与し、初回投与は4mg/kg、2回以降の投与は2mg/kgの用量とした。S-1は3段階の用量を設定し、レベル1は80mg/m2、レベル-1は65 mg/m2、レベル-2は50mg/m2とした。S-1は全ての用量で4週投与、2週休薬することとした。このサイクルを6週毎に繰り返し、病勢進行または忍容不能な毒性の発現まで継続した。
 
 レベル1の用量で投与を行い、3人ごとに用量制限毒性(DLT)を観察し、1サイクル目に発現しなければ患者を追加し、最終的に12人で評価した。患者は全員女性で、年齢中央値は66歳だった。

 このコホートでDLTは出現しなかった。グレード3の有害事象として、白血球減少、好中球減少、めまいが各1人に発現したのみであった。したがってこの併用療法のRDは、トラスツズマブの初回投与は4mg/kg、2回以降の投与は2mg/kg、S-1は80mg/m2と決定した。

 RECIST基準による完全奏効(CR)は8.3%、部分奏効(PR)は25%で、全奏効率は33.3%となった。DCRは83.3%で、臨床的な有効性についてもこの併用療法が有望なことが示唆された。

 転移性乳癌患者の治療ではQOLを維持することも重要であり、投与が簡便で、毒性の発現が軽度であるS-1をトラスツズマブと併用してアップフロントで使用することにより、患者に快適な期間を長く提供することができると考えられる。高島氏らは、この試験で決定した用量によるフェーズ2試験を開始している。