ホジキンリンパ腫(HL)に対する治療はABVD療法か、それともBEACOPP療法か――。6月10日から13日までスペイン・バルセロナで開催された欧州血液学会のセッション「Lunch Debate」で、フランスInstitut Gustave Roussy/American Hospital of ParisのPatrice Carde氏とドイツUniversity Hospital of CologneのAndreas Engert氏が登壇。ABVD療法あるいはBEACOPP療法を支持する立場から議論を展開した。予後良好な早期HLの治療についてはABVD療法を主とすることで意見が一致したが、予後不良な早期HLと進行期HLの治療では意見が分かれた。

 ABVD療法は、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンを用いる治療法。一方のBEACOPP療法は、ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロンによる治療法。

 早期HLの治療は、ABVD療法を中心とする化学療法と放射線治療の併用が標準で、進行期HL腫に対しては化学療法のみとされている。しかし、予後不良な患者に対しては、BEACOPP療法も有用性が高いと報告されている。

 ディベートでは、Carde氏が「ホジキンリンパ腫の治療の目的が治癒であるならば、すべての病期でABVD療法がゴールドスタンダードである」と述べたのに対し、Engert氏はBEACOPP療法の可能性を強調する展開となった。両者ともその根拠となる臨床試験を、早期予後良好(Early stage/favorable stage I-II)、早期予後不良(Intermediate stage/unfavorable stage I-II)、進行期(Advanced stage)に分けて紹介した。

早期予後良好の治療:
ABVD療法+放射線療法を基本にPETによる効果判定で効果に合わせた治療を


 早期HLに対する化学療法はかつてMOPP療法(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン)が使われていたが、現在はABVD療法が標準レジメンとなっている。

 Engert氏らが行ったGerman Hodgkin's Lymphoma Study Group(GHSG)のHD10試験では、2×2デザインのもと、ABVD療法2サイクルまたは4サイクルと、領域照射(IFRT)20Gyまたは30Gyの計4群で比較された。その結果、4群間でFFTF(freedom from treatment failure)に有意な差が認められなかった。このため、Engert氏は、「早期 favorable HLにはGHSG-HD10試験からABVD療法2サイクル+IFRT 20Gyで安全に治療できる」と指摘した。

 この点はCarde氏も同意見だった。その上で、「ABVD療法2〜3サイクルを基本に、効果に合わせた反応‐順応的管理」を勧めた。これは「ABVD療法の効果が高い場合は放射線療法の線量や区域の減少を検討し、逆に効果が低い患者には強化治療を行う」とするもの。

 そこでCarde氏は、PETを用いてABVD療法の効果を評価した上で、その後の治療法を変える2つの試験を紹介した。まずH10 EORTC/GELA /IIL試験(H10F、H10U)。未治療のHL患者(CS I/II)を対象に、まずABVD療法を2サイクル行った後、ABVD療法+放射線療法(30Gy)をする標準治療群と、PETで効果判定をした上で、効果を認める場合にはABVD療法のみを行うPET陰性群、効果を認めない場合にはBEACOPP療法(増量)+放射線療法(30Gy)を行うPET陽性群という3群比較の試験だ。

 次は、GHSGのHD16試験。HL患者(CS I/II)を対象に、ABVD療法2サイクル+IFRT 30Gyを行う標準治療群と、ABVD療法2サイクル後PETで効果判定した結果が「効果が高い」場合は経過観察とするPET陰性群、「効果が低い」場合はIFRT 30Gyを行うPET陽性群とし、これら3群を比較する。

 これらの試験の結果によっては、早期予後良好の患者に対してはABVD療法+放射線療法を基本に、効果に合わせた治療が可能になると言えるだろう。

早期予後不良の治療:
「ABVD療法+放射線療法」対「BEACOPP療法+ABVD療法+放射線療法」の構図


 予後不良因子を持つ早期HLの患者においても、MOPP療法+放射線療法とABVD療法+放射線療法との比較で、ABVD療法+放射線療法が優れていることが報告されている。

 またGHSG HD11試験では、BEACOPP療法4サイクルとABVD療法4サイクル、およびIFRT 20Gyと30Gyの4群が比較されたが、それぞれの群間でFFTFに有意差がなかった。EORTC H9U試験でも、BEACOPP療法4サイクル+IFRTとABVD療法4サイクル+IFRT、ABVD療法6サイクル+IFRTが比較され、無イベント生存はABVD療法4サイクル+IFRTが優れていた。ただし、全生存は3群で変わらなかった。

 このためCarde氏は、早期予後不良患者に対しても、ABVD療法+放射線療法が標準であると主張した。

 これに対してEngert氏は、BEACOPP療法(増量)2サイクル+ABVD療法2サイクル+IFRT 30Gyを勧めた。すでにドイツGHSGでは、新しい標準治療になっているという。

 Engert氏の主張の根拠となっているのは、GHSG HD14試験。ABVD療法4サイクルの後、IFRT 30Gyを行う群と、BEACOPP療法(増量)2サイクル後、ABVD療法2サイクル、その後、IFRT 30Gyを行う群が比較された。ABVD療法のみの群に比べ、BEACOPP療法も併用した群は、完全奏効率が高く(93.7%対95.5%)、無増悪生存(PFS)も優れていることが示されている。

進行期の治療:
ABVD療法だけでは不十分、BEACOPP療法に期待


 進行期HLの治療に使われる化学療法も、ABVD療法が標準とされている。しかし、GHSG HD9試験で、COPP/ABVD療法8サイクル±放射線療法とBEACOPP療法8サイクル±放射線療法、BEACOPP(増量)療法8サイクル±放射線療法が比較され、BEACOPP(増量)療法はCOPP/ABVD療法に比べて、10年でFFTFは18%、生存率は11%良好であることが示された。

 また、他の試験でもBEACOPP療法が優れていることが報告されていることから、Engert氏は、進行期 HLではBEACOPP(増量)療法がすべての予後因子で優れた結果が出ているとし、「BEACOPP療法というチャンスをつかむべきだ」とBEACOPP療法を推奨した。

 Carde氏も、現時点ではABVD療法が標準であるとしつつも、進行期HLに対してはさらに検討の余地があるとし、PETなどを用いて効果に合わせた治療を勧めた。

 同氏によると現在、進行期HLを対象にPETによる効果判定を用いたGHSG HD18試験が進行している。BEACOPP(増量)療法2サイクル後、PETで効果判定し、陽性の場合はBEACOPP(増量)療法6サイクルもしくはリツキシマブ+BEACOPP(増量)療法6サイクル、PET陰性の場合はBEACOPP(増量)療法6サイクルもしくはBEACOPP(増量)療法2サイクルの計4群で比較される。

 最後にCarde氏は、標準とされるABVD療法に放射線療法を追加する治療法にも言及。化学療法で完全奏効が得られた患者では放射線療法を追加しても再発リスクに差はないが、完全奏効に至らなかった部分奏効などの患者では放射線療法を追加すると予後が改善される可能性がEORTC H34試験で示唆されているとした。