癌における原発巣の細胞と転移巣の細胞はいずれも1つのクローン細胞に由来するが、脳転移巣細胞は変異の蓄積によって原発巣細胞とは遺伝的に異なっていくことが明らかになった。10月1日までアムステルダムで開催されたEuropean Cancer Congress 2013(ECC2013)で、米国Massachusetts General Hospital Cancer CenterのPriscilla K.Brastianos氏が発表した。

 脳転移は癌患者の8〜10%に認められ、肺癌、乳癌、メラノーマ患者で多く認められる。生存期間は数カ月と予後が不良だ。

 今回Brastianos氏は、原発巣から脳転移が発生する機序を解明するため、原発巣と転移巣のゲノム解析を行った。これまでの基礎的な検討では、転移は原発巣の1つの腫瘍細胞に由来することが示されている。今回の検討では、脳転移巣の細胞が原発巣の細胞と遺伝的に異なっているかどうかを評価した。

 対象は脳転移を有する患者101人(肺癌と乳癌で7割以上を占めた)で、原発巣、脳転移、正常細胞について全エクソームシーケンス(遺伝子がコードされている領域の塩基配列を決定する方法)を実施。遺伝子変異数やコピー数を基に、原発巣細胞/正常細胞と転移巣細胞/正常細胞の関係について解析し、腫瘍組織内で全ての細胞に起こるクローン変異と変異の進行によって異なっていくサブクローン変異を分けた。

 遺伝子解析の結果、全体では原発巣細胞と転移巣細胞の遺伝子変異の61%は共通だった。しかし、例えば乳癌において正常細胞と原発巣細胞の変異の蓄積の差に比べ、正常細胞と転移巣細胞の変異の蓄積の差は、肺癌のそれと比べて大きいなど、癌の種類によって原発巣細胞と転移巣細胞の遺伝的な差が異なることが示された。

 腎細胞癌では、生殖由来細胞からmTOR、p.K1452N、VHL、p.L188Pなどの変異が蓄積して癌前駆細胞になっていくが、その後、転移巣細胞ではPIK3CA、p.E542K、SMC3、p.S731Pなどに変異が認められ、原発巣とは異なった遺伝的背景を持っていることが示された。乳癌では、生殖由来細胞からMGA、p.S1371T、TP53、p.R248Qなどの変異が蓄積して癌前駆細胞になるが、その後、原発巣と転移巣細胞は異なった変異の蓄積が進むことが明らかになった。

 これらの結果からBrastianos氏は、いずれの転移巣細胞も1つの細胞のクローンから発達していくこと、脳転移巣細胞は原発巣細胞と遺伝的に異なっていること、原発巣細胞、転移巣細胞がそれぞれドライバー変異を有するようになるとまとめた。そして、分子標的治療により効果が認められる腫瘍と効果が認められない腫瘍が混在するのは遺伝子変異のheterogeneityのためであり、原発巣にない標的を見出すため転移巣の検討を進める必要があると指摘した。