PIK3CA変異はHER2陽性乳癌患者に高頻度に見られる。変異の有無と抗HER2薬を用いた治療に対する反応性を、フェーズ3 NeoALTTO試験に登録された乳癌患者を対象に分析したところ、変異陽性患者はPIK3CA野生型の患者に比べ、トラスツズマブラパチニブを併用されても病理学的完全奏効(pCR)を達成できる可能性は低いことが明らかになった。スペインVall d'Hebron大学病院のJose Baselga氏がECC2013で9月29日に報告した。

 NeoALTTO試験は、浸潤性で手術可能なHER2陽性乳癌患者455人を登録して、いずれも抗HER2薬であるトラスツズマブ(T)とラパチニブ(L)を術前補助療法として併用した場合の有効性と安全性を、これらの薬剤を単剤で投与した場合と比較したもの。6週間は割り付け薬のみを投与し、その後は割り付け薬にパクリタキセルを追加して12週間投与した。pCR達成者の割合は、併用群が51.3%、L単剤群が24.7%、T単剤群が29.5%で、併用の優越性が示された(併用群とT群の差は21パーセンテージポイント、p=0.0001)。単剤群間の差は有意では無かった(p=0.34)。

 研究者たちは、癌細胞の生存に重要なPI3K/AKT経路の活性化はT耐性獲得に関係する分子機構の1つであること、腫瘍がPIK3CA変異陽性でPTEN遺伝子の発現レベルが低いとT投与後の転帰は不良になること、in vitroではPTEN機能喪失変異またはPIK3CA変異陽性がL耐性を腫瘍細胞に付与することなどに基づいて、PI3K経路で機能するPIK3CAや、KRAS、BRAFといった遺伝子の変異がTやLを治療に用いた場合の感受性に与える影響を分析することにした。

 NeoALTTO試験に登録された449人のHER2陽性早期乳癌患者からベースラインで採取、凍結されていた標本を得、DNAを抽出し、質量分析計を用いて遺伝子型を調べたところ、355人(78%)について遺伝子型が得られた。

 主要転帰評価指標は、手術の時点のpCR(乳房に腫瘍なし)に設定した。

 PIL3CA変異は355人中82人(23%)に見つかった。内訳は、L群124人中29人(23%)、T群112人中21人(19%)、併用群119人中30人(25%)だった。また、この変異はエストロゲン受容体(ER)陰性患者186人のうちの22%、ER陽性の169人中23%に見られた。

 KRAS変異陽性は1人(0.3%)、BRAF変異陽性者はいなかった。

 PIK3CA変異はpCR率が低いことに関係していた。全体では変異陽性者のpCR達成率は21%、PIK3CA野生型患者では34%で、差は13.1パーセンテージポイント(95%信頼区間:2.2-24.0、χ2検定のp=0.03)だった。この関係はどのコホートの患者にも認められ、併用群では差は有意になった。pCR率は野生型患者が55.8%、変異陽性患者では28.6%(p=0.012)。L群のpCR率は野生型患者が20.4%、変異陽性患者では14.8%、T群ではそれぞれ28.4%と20.0%で、差は有意にならなかった。

 ER陰性群、陽性群のいずれでも、pCR率は野生型患者の方が高かった。

 割り付け群とERの発現状況で調整し、ロジスティック回帰モデルを用いてPIK3CA変異陽性者のpCR達成の可能性を推定したところオッズ比は0.45(p=0.015)になった。

 予備的な研究として、CST社の抗体を用いた免疫組織染色を行い、PTEN喪失がありさらにPIK3CA変異陽性という、PI3K経路が活性化された状態にある患者では、そうではない患者に比べpCR達成率が低下することを示唆する結果も得たが、今後さらに分析を行ってデータを収集する計画だという。

 得られたデータは、HER2陽性乳癌患者において、PIK3CA変異はERの発現状況とは無関係にトラスツズマブとラパチニブを用いた治療に対する反応の低下に関係することを示した。