上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするヒト抗体製剤zalutumumabを用いた根治的な化学放射線療法が、局所に留まる、または局所進行性の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者の局所制御率を高められるかどうかを調べたデンマーク頭頸部腫瘍グループ(DAHANCA)の研究者たちは、対照とした根治的放射線療法に優る利益を示せなかった。デンマークAarhus大学病院のJesper Grau Eriksen氏がECC2013で9月30日に報告した。

 DAHANCAは頭頸部腫瘍に対する放射線治療(RT)の有効性を高めるために、増感剤の使用、加速分割照射の適用、さらに化学療法薬併用の影響を検討してきた。

 HNSCC患者にRTと抗EGFR抗体製剤を併用すると生存期間が延びることが示唆されており、zalutumumabについては、フェーズ1/2試験DAHANCA 15で抗腫瘍活性が示されていた。

 研究者たちは、zalutumumabをRT期間中に投与することにより、HNSCC患者の転帰が向上するかどうかを調べる無作為化フェーズ3試験を行った。2007年11月から2012年6月まで、デンマーク国内とノルウェイのOsloで、生検で確認されたHNSCC患者で手術歴が無く、局所進行度はT1-4の全て、所属リンパ節転移はN0-3の全て、遠隔転移はM0(無し)で、HPV16型の感染の有無がp16の検出を通じて明らかになっている619人を登録した。

 内訳は、4%が口腔癌、69%が口腔咽頭癌、12%が下咽頭癌、14%が喉頭癌で、全体の89%がステージ3-4だった。

 腫瘍の部位、病期などで層別化し、zalutumumab併用有り、または無しに割り付けた。両群に、根治的な強度変調放射線治療として加速分割照射法を適用。総線量を66-68Gyとし、2Gy/回を1週間に6回照射。リンパ節転移無し群には、1回の線量を1.35Gyにして1日2回、週10回、総線量を76Gyとする加速過分割照射法の選択も許可した。低酸素細胞放射線増感剤ニモラゾール1200mg/m2を照射前に90分かけて投与。リンパ節転移陽性患者には、放射線治療期間中に、週1回40mg/m2のシスプラチンを投与した。待機的な頸部リンパ節郭清術は行わなかった。

 以上に加えて介入群にはzalutumumab 8mg/kgを併用。RT開始の前週に初回投与を行い、RT期間中も週1回投与した。

 主要転帰評価指標は局所制御(LRC:放射線を照射した部位からの再発や再燃を認めない状態)率とし、2次評価指標は、疾患特異的生存率(DSS)、全生存率(OS)、急性毒性と晩期毒性に設定、intention-to-treat分析した。

 309人の患者が放射線治療のみの対照群に、310人が放射線治療+zalutumumabの介入群に割り付けられ、中央値36カ月追跡された。割り付けられた治療を1回も受けなかった対照群の2人と介入群の5人は分析対象から除いた。対照群307人の平均年齢は59歳、男性が82%、73%が喫煙者で、介入群305人ではそれぞれ58歳、81%、68%だった。HPC/p16陽性は54%と55%、口咽頭癌患者に限定すると77%と73%になった。

 放射線治療も含めた治療遵守率は両群間で同様だった。介入群の患者はzalutumumabの投与を平均5.5回受けていた。

 分析時点で123人の患者がLRC失敗と判定された。3年LRC率は介入群が78%、対照群が79%で、対照群と比較した介入群のLRC失敗のハザード比は1.2(95%信頼区間:0.9-1.7)になった。HNSCCによる死亡は70人で、DSSは両群ともに87%、ハザード比は0.9(95%信頼区間:0.6-1.5)だった。全死因死亡は115人で、対照群のOS率は82%、介入群が78%、全死因死亡のハザード比は1.1(95%信頼区間:0.8-1.6)だった。

 すべての患者を対象にHPV/p16とLRCの関係を調べたところ、LRC失敗、HNSCC死亡、全死因死亡のリスクはHPV/p16陰性患者の方が有意に高かった。一方で、zalutumumab追加の利益は、HPV/p16陽者、陰性者のいずれにおいても有意ではなかった。LRC失敗のハザード比は、陽性者が1.1(0.7-1.9)、陰性者は1.2(0.8-2.0)だった。

 放射線治療中の融合性粘膜炎と、照射域のグレード3-4の皮膚反応はいずれも、両群間の差が最大になった時点では、介入群の罹患リスクが有意に大きかった。また、介入群の94%が発疹を経験、29%はグレード3-4と判定された。発疹によるザルツムマブ投与中止は全体の11%だった。

 晩期毒性には有意差は見られなかった。

 HNSCCに対する根治的放射線治療にzalutumumabを加えても、3年間の転帰に改善は見られなかった。