HER2陽性進行・再発乳癌の日本人患者に対し、エリブリントラスツズマブの併用療法は忍容性が良好であり、多く観察された好中球減少も管理可能と考えられる結果が、多施設共同のフェーズ1試験から示された。9月27日から10月1日までアムステルダムで開催されたEuropean Cancer Congress 2013(ECC2013)で、国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科の向井博文氏が発表した。

 新規の微小管阻害薬であるエリブリンは、アントラサイクリンとタキサンによる治療歴がある進行・再発乳癌患者で生存の有用性が示されている。しかし、エリブリンとトラスツズマブの併用療法はまだ確立されていない。

 向井氏らは、HER2陽性進行・再発乳癌の日本人患者を対象とするフェーズ1試験を実施し、エリブリンとトラスツズマブ併用療法の用量制限毒性(DLT)、忍容性と安全性を検討し、エリブリンの推奨量を推定した。
 
 トラスツズマブは、パート1では初回投与は4mg/kg、その後は2mg/kgを毎週投与し、パート2では初回投与は8mg/kg、その後は6mg/kgを3週毎に投与した。エリブリンは1.4mg/m2を1日目と8日目に投与し、3週毎/サイクル毎に繰り返した。

 DLTの評価は1サイクル目に行った。左室駆出率(LVEF)の評価は、治療前、1サイクル目の15日目、その後は4サイクル毎にサイクルの1日目に行い、臨床的に必要な場合は追加した。

 パート1と2にそれぞれ6人を登録し、計12人の年齢中央値は60歳(範囲39-72)、前治療の化学療法のレジメン数中央値は4.5(範囲:1-14)だった。全例に前治療でトラスツズマブが投与されていた。

 2013年4月15日までの時点で、DLTは観察されなかった。パート1および2で多く観察された有害事象は、血液毒性では、好中球減少が100%(グレード3/4:100%)、白中球減少が100%(同83.3%)、貧血が67%(同0%)に発現し、発熱性好中球減少は8.3%(同8.3%)だった。非血液毒性では、脱毛66.7%、発熱41.7%、食欲低下41.7%などだった。同試験の安全性プロファイルは、日本人を対象に行われたエリブリン単剤の過去の臨床試験と同様だった。グレード5または重篤な有害事象は認めなかった。

 エリブリンの用量の調節は10人(83.3%)で要し、8人(66.7%)は減量、8人(66.7%)は投与延期、5人(41.7%)はサイクルをスキップした。有害事象による中止は、1人(8.3%)が末梢神経障害、1人(8.3%)が癌性疼痛によるものだった。

 グレード2のLVEF低下は、1サイクル目の15日目に2人(16.7%)に発現したが、経過観察のみで1週間後に回復した。

 トラスツズマブとの併用療法におけるエリブリンの薬物動態のプロファイルは、エリブリン単剤の臨床試験と同様だった。エリブリンとトラツズマブの間に薬物相互作用は観察されなかった。

 有効性については、全例がベースライン後の評価を1回以上受けた。部分奏効(PR)は1人(8.3%)、5週以上持続する安定状態(SD)は10人(83.3%)で得られ、進行(PD)は1人(9%)だった。奏効率は8.3%、完全奏効(CR)とPRと11週以上持続するSDを合わせた病勢コントロール率(DCR)は75%となった。

 一過性のLVEFの低下が2人に発現したことから、向井氏は「トラスツズマブと併用する場合、心機能の評価はルーチンで行う必要がある」と述べた。現在、長期的な安全性の評価が進行中である。