センチネルリンパ節転移陽性乳癌患者において、術後合併症、リンパ浮腫などを避ける観点から、腋窩リンパ節郭清(ALND)よりも腋窩リンパ節照射(ART)が望ましい可能性が報告された。前向き国際共同無作為化フェーズ3試験EORTC AMAROS試験結果によるもので、9月27日から10月1日までオランダアムステルダムで開催されているEuropean Cancer Congress 2013(ECC2013)で、オランダNetherlands Cancer InstituteのM.Donker氏が発表した。

 センチネルリンパ節生検で陽性だった場合、腋窩リンパ節郭清(ALND)または腋窩リンパ節照射(ART)が標準的に行われる。だが、ALNDは副作用が高頻度で発現することが課題となっているほか、ART実施後の副作用に関するデータは限られている。

 AMAROS試験は、センチネルリンパ節転移陽性の乳癌患者を対象に実施されたもので、ALNDとARTを比較した前向き国際共同無作為化試験。2013年の米国臨床腫瘍学会では、センチネルリンパ節転移陽性乳癌患者に対して、ALNDとARTは同等の局所制御が可能なほか、ARTは短期および長期にわたり浮腫リスクを軽減することが報告されている。

 今回は、リンパ浮腫と肩の動きについて治療後5年まで解析したほか、治療後1年時点でそれぞれのリスク因子を検討した。

 対象は、転移のないcT1-2の原発性乳癌患4806人。ALNDを実施する群(ALND群、744人)とARTを実施する群(ART群、681人)の2群に無作為に割り付けた。

 ALNDは、センチネルリンパ節生検実施後12週間未満にレベルI+IIで実施し、4個以上のリンパ節転移がある場合は追加でARTを行った。ARTは、レベルI+II+III+内側鎖骨上に対し、センチネルリンパ節生検後12週未満で開始し、2Gyを25方向もしくは同等量を照射した。

 リンパ浮腫と肩の動きの評価は、治療後1、3、5年時点で行った。リンパ浮腫は観察と腕の外周を測定し、肩の動きは前捻と後捻、外転と内転の動きを測定した。

 年齢中央値はALND群が56歳、ART群が55歳。両群ともに閉経前患者は約4割、BMIは25kg/m2以下、25〜30kg/m2ともにそれぞれ約4割。乳房温存術施行患者が約8割、内胸または胸壁への照射はALND群が85%、ART群が88%。

 解析の結果、5年腋窩リンパ節再発率はALND群が0.43%、ART群が1.19%だった。

 手術合併症の発現率は、ALND群(672人)が22.6%で、ART群の9.0%と比べて有意に高かった(p<0.001)。有意差の見られた合併症は、感染症(10.7%対3.8%)漿液腫の持続(10.4%対1.3%)、出血(3.1%対1.7%)、早期のリンパ浮腫(1.6%対0.2%)。

 治療1年後後のリンパ浮腫の発現率は、ALND+ART群が他の2群と比べて高かった。ALND群が25.6%、ART群が15.0%、ALND+ART群が59.3%、治療後3年時点はそれぞれ21.0%、13.4%、44.8%、治療後5年時点は20.8%、10.3%、58.3%。

 またリンパ浮腫で腕の外周が10%以上増加した患者割合はALND+ART群が他の2群と比べて多かった。治療後1年時点でALND群が7.2%、ART群が5.9%、ALND+ART群が14.8%、治療後3年時点でそれぞれ9.2%、6.2%、24.1%、治療後5年時点で11.7%、5.7%、29.2%。

 肩の可動域は、ALND群、ART群どちらも治療後1年時点で減少し、治療後3年時点、5年時点でもその可動域を維持する傾向だった。両群間に有意差はなかった。

 さらに、リンパ浮腫のリスク因子を検討した結果、閉経状態、BMI、治療した側の腕、腋窩リンパ節への治療の種類だった。肩の動きのリスク因子としては、腋窩リンパ節への治療の種類、鎖骨上への照射、ALNDレベル(レベルI+II対I+II+III)が抽出された。

 これらの結果からDonker氏は、「ALND群の術後合併症はART群の2.5倍だった。また、ART群と比べ、ALND群の治療後5年時点のリンパ浮腫発現率は2倍、ALND+ART群は5倍高く、腋窩リンパ節に対する治療の種類がリンパ浮腫と肩の動きのリスク因子であることが示された。今回の結果を踏まえると、ARTが推奨され、ALNDとARTを併用することは可能なかぎり避けることが望ましい」と語った。