HER2陽性進行乳癌で、PI3K/mTORシグナル伝達経路が活性化したトラスツズマブ抵抗性患者では、トラスツズマブとビノレルビン併用にエベロリムスを追加することで、生存がより改善することが、無作為化二重盲検フェーズ3試験BOLERO-3のバイオマーカーに関する探索研究で確認された。ベルギーCHU Sart Tilman Liege and University of LiegeのGuy Jerusalem氏らが、9月27日から10月1日までアムステルダムで開催されているEuropean Cancer Congress 2013(ECC2013)で発表した。

 BOLERO-3試験は、タキサン系抗癌剤による治療歴があり、トラスツズマブ抵抗性の局所進行または転移性のHER2陽性乳癌患者569人を、トラスツズマブとビノレルビン、およびエベロリムスを投与する群(エベロリムス群)と、トラスツズマブとビノレルビン、およびプラセボを投与する群(プラセボ群)に1:1で割りつけた。
 
 エベロリムスは毎日5mg経口投与し、ビノレルビンは週1回25mg/m 2を、トラスツズマブは初回4mg/kg、2回目以降2mg/kgを週1回、静脈投与した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、奏効率などであった。
 
 試験の結果、エベロリムス群のプラセボ群に対するPFSのハザード比は0.78(95%信頼区間:0.65-0.95)、p=0.0067で、エベロリムスによる有意な改善が報告されている。PFS中央値はエベロリムス群が7カ月、プラセボ群が5.78カ月だった。
 
 乳癌患者において、PI3K/mTORシグナル伝達経路が活性化している場合、トラスツズマブ抵抗性となるが、mTOR阻害剤であるエベロリムスにより同シグナル伝達経路を阻害することで効果が高くなることが期待された。そこでPI3K/mTORシグナル伝達経路の分子の発現とエベロリムスの効果との関連性が検討された。
 
 腫瘍検体は569人のうち283人で得られた。癌抑制遺伝子であるPTENとPI3K/mTORシグナル伝達経路の下流にあるpS6は免疫組織化学法で、PIK3CAはサンガー法で解析した。
 
 まずPTENについて、染色強度H-スコアを100とし、20パーセンタイルをカットオフと設定したところ、20パーセンタイル未満の患者ではエベロリムス群の効果がプラセボ群に比べて高かった(ハザード比0.41、95%信頼区間:0.2-0.82)。PFS中央値はエベロリムス群41.9週、プラセボ群23.1週であり、PTEN レベルが低い患者群ではPFSは18-19週延長することが示された。一方、PTENが20パーセンタイル以上の患者ではPFS中央値が2群とも30.1週と同じだった(ハザード比1.05、95%信頼区間:0.75-1.45)。
 
 同様にpS6について、H-スコアを160とし、75パーセンタイルをカットオフとしたところ、pS6レベルが高い患者でエベロリムスの効果が高いことが示され(ハザード比0.48、95%信頼区間:0.24-0.96)、PFS中央値はエベロリムス群29.4週、プラセボ群17.1週であった。反対にpS6レベルが低い患者では、エベロリムス追加の利益は認められなかった(ハザード比1.14、95%信頼区間:0.77-1.68)。
 
 PIK3CAについては、PIK3CA野生型の患者ではPFSは2群間で差はなく(ハザード比0.98、95%信頼区間:0.67-1.44)、PIK3CA変異型患者では人数が少ないため評価できなかったとした(ハザード比0.65、95%信頼区間:0.29-1.45)。
 
 以上のことから、今回の結果は、mTOR阻害剤がPI3K/mTORシグナル伝達経路に関連したトラスツズマブ抵抗性を弱めるとする仮説に一致するとし、「PTEN レベルが低いもしくはpS6レベルが高いHER2陽性進行乳癌患者では、エベロリムス追加による有効性がより高いことが示唆される」とした。