トラスツズマブとラパチニブによる治療を受けたHER2陽性転移性乳癌に対し、抗体薬物複合体であるT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)は、担当医師が選択した治療に比べ、有効性および安全性が高いことがフェーズ3試験TH3RESAで明らかになった。ベルギーUniversity Hospitals LeuvenのHans Wildiers氏らが、9月27日から10月1日までアムステルダムで開催されているEuropean Cancer Congress 2013(ECC2013)で発表した。

 TH3RESA試験は、HER2陽性切除不能局所進行もしくは転移性乳癌で、トラスツズマブとラパチニブ、タキサン系抗癌剤を含む治療を2レジメン以上受けた患者を対象に、T-DM1を投与する群(T-DM1群)と医師が選択した治療を行う群(TPC群)に2:1の割合で分けた。T-DM1は3.6mg/kgを静注で3週おきに投与した。

 主要評価項目は、担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)とした。主な副次評価項目は、担当医師評価による奏効率と安全性と設定された。

 T-DM1については、トラスツズマブとタキサン系抗癌剤による治療の経験があるHER2陽性転移性乳癌患者を対象にしたフェーズ3試験EMILIAで、T-DM1はラパチニブとカペシタビン併用に比べ、PFSとOSを有意に延長することが報告されている。このため、病勢進行後、TPC群からT-DM1群へのクロスオーバーが許可された。

 2013年2月11日までに602人がランダム化された。TPC群の44人がT-DM1群へクロスオーバーした。患者の年齢は65歳未満がTPC群(198人)で82.8%、T-DM1群(404人)で85.4%を占めた。また転移性乳癌がそれぞれ94.4%、96.8%であり、切除不能局所進行・再発乳癌は5.6%、3.2%だった。進行乳癌に対する前治療の中央値は両群とも4レジメンだった。

 TPC群では医師の選択により抗HER2療法を用いた併用療法を受けた患者が83.2%、単剤化学療法が16.8%であった。併用療法は、化学療法+トラスツズマブ(68.5%)、ラパチニブ+トラスツズマブ(10.3%)、ホルモン療法+トラスツズマブ(1.6%)、化学療法+ラパチニブ(2.7%)であった。なお化学療法としては、ビノレルビンやゲムシタビン、エリブリン、パクリタキセル、ドセタキセルが使われた。

 事前に、PFS最終解析はイベント数が324に達した時点で行い、OSの第1回中間解析はイベント数105に達した時点で行うことが設定されていた。

 この結果、PFS中央値はT-DM1 群で6.2カ月、TPC群は3.3カ月で、ハザード比は0.528(95%信頼区間:0.422-0.661)、p<0.0001だった。また年齢や地域、ECOG PSなどによるサブグループ解析でもT-DM1群のPFSは良好であった。
 
 またトラスツズマブによる治療を受けた患者のみで評価したところ、PFS中央値がT-DM1群(404人)で6.2カ月、TPC群(149人)は3.2カ月で、ハザード比は0.558(95%信頼区間:0.437-0.711)、p<0.0001であった。

 OSの第1回中間解析も同様の傾向を示した。OS中央値がT-DM1群では未到達、TPC群は14.9カ月で、ハザード比は0.552 (95%信頼区間:0.369-0.826)、p=0.0034だった。

 奏効率はT-DM1群で31.3%、TPC群は8.6%で、その差は22.7%(95%信頼区間:16.2-29.2)p<0.0001であった。

 T-DM1群の安全性プロファイルは既報告と同じだった。グレード3以上の有害事象はT-DM1群では32.3%だが、TPC群は43.5%であった。有害事象による治療中止はそれぞれ6.7%、10.9%、有害事象による投与量の減量は9.4%、19.6%だった。
 
 T-DM1群で多かったグレード3以上の有害事象は血小板減少症(T-DM1群4.7%、TPC群1.6%)だった。一方、TPC群で多かったグレード3以上の有害事象は好中球減少症(T-DM1群2.5%、TPC群15.8%)、発熱性好中球減少症(T-DM1群0.2%、TPC群3.8%)、下痢(T-DM1群0.7%、TPC群4.3%)だった。