新たな皮下注射型DNAメチル化阻害薬SGI-110を成人の急性骨髄性白血病(AML)患者に適用した無作為化フェーズ2試験で、好結果が得られた。全奏効率は、再発性/難治性患者で16%、治療歴の無い高齢患者では43%になった。米Temple大学のJean Pierre Issa氏が、ASH2013で2013年12月9日にフェーズ2データを初公開した。

 DNAのメチル化はエピジェネティックなプロセスで、遺伝子の発現と密に関係している。骨髄異形成症候群(MDS)とAMLではしばしば、メチル化状態に変化が生じており、エピジェネティックな制御に関与するTET2、DNMT3a、EZH2等の遺伝子に変異も見られる。既にMDS、AMLの治療にはDNAメチル化阻害薬であるアザシチジン、デシタビンなどが用いられている。

 SGI-110は、米Astex Pharmaceuticals社(2013年9月に大塚製薬が買収)が開発した第2世代のDNAメチル化阻害薬で、5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン)とデオキシグアノシンからなるジヌクレオチド製剤。皮下注射が可能で、デシタビン静注に比べ血中半減期は約4倍、作用時間は約2倍の8時間になっている。薬物動態学的プロファイルもデシタビンより良好で、MDSとAMLを対象とするフェーズ1では臨床反応を誘導できることが示されている。

 AML対象フェーズ1で、生物学的有効量(BED:50%以上の患者でDNAメチルトランスフェラーゼ1の発現が50%未満になり、毒性は容認できるレベルにある用量)は60mg/m2/日を5日間投与と判明したが、最大耐量(MTD)は明らかになっていない。MDS患者のMTDは90mg/m2を5日間投与と報告されている。

 無作為化フェーズ2は、再発性/難治性のAML患者、または、65歳以上の治療歴のないAML患者で導入化学療法が適用にならない、具体的には、全身症状が不良(ECOG PS 2)、心臓または肺に併存疾患あり、細胞遺伝学的所見が不良、2次性AMLなどの条件を満たす計90人(再発性/難治性患者が50人、治療歴の無い高齢患者が40人)を登録、60mg/m2を1日1回5日間皮下注射(43人、年齢の中央値は69歳)、または、90mg/m2を1日1回5日間皮下注射(47人、70歳)に割り付けた。治療は、耐えがたい毒性が現れるまで、または進行が見られるまで継続した。

 主要転帰評価指標は全寛解率(CR:完全寛解、CRi:血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解、CRp:血小板の回復は不十分だがそれ以外は完全寛解、を合わせた割合)に設定、国際ワーキンググループが2006年に公表した基準に基づいて判定した。安全性の指標はCTCAE v4に基づく有害事象発生率などとした。

 60mg群の全寛解率は25.6%(95%信頼区間:13.5-41.2)、内訳はCRが14.0%、Criが9.3%、CRpが2.3%だった。90mg群は29.8%(17.3-44.9)、12.8%、14.9%、2.1%となり、両群の反応に有意差は見られなかった。

 再発性/難治性患者の全寛解率は16.0%(7.2-29.1)で、内訳は4.0%、8.0%、4.0%、治療歴が無い高齢患者では42.5%(27.0-59.1)、25.0%、17.5%、0%だった。治療歴が無い患者に見られた、単剤で全寛解率42.5%という結果は、この製品が非常に有望であることを示す。

 最も多く見られた有害事象はグレード1/2の注射部位の反応だった。グレード3/4の有害事象としては、血小板減少症、貧血、白血球減少症などが60mgに多く見られた。90mg群では発熱性好中球減少症、好中球減少症が最も多く、白血球減少症、血小板減少症がそれに続いた。

 30日死亡率は60mg群が7.0%、90mg群は2.1%、60日死亡率は16.3%と10.6%だった。

 薬力学的分析では、DNAメチル化の国際的な指標であるLong interspersed element 1(LINE-1)をマーカーとして脱メチル化レベルを評価した。60mg群より90mg群の方が最大脱メチル化レベルは大きい傾向が見られたが、差は有意では無かった。治療歴無し高齢患者と再発性/難治性群の脱メチル化レベルを比較すると、後者のほうが大きく、両群の差は有意だった。また、再発性/難治性患者では、CR、CRi、CRp達成者の脱メチル化レベルは非達成者より大きく、このタイプの患者では、脱メチル化レベルが寛解予測マーカーの1つになると考えられた。一方、治療歴無しの高齢患者では、脱メチル化レベルの高低にかかわらずCR、CRi、Crp達成者が認められた。ただし、寛解達成者の方が脱メチル化の持続期間は長い傾向が見られた

 得られたデータはフェーズ3の実施を支持した。