新規診断の慢性骨髄性白血病で慢性期にある患者にニロチニブ(NIL)またはイマチニブ(IM)を投与したENESTnd試験の5年時の結果も、これまでどおり、NILはIMに優る効果を示した。NIL群のほうが早期分子遺伝学的反応(EMR)達成率が高く、多くの研究で無治療寛解の基準として用いられているMR4.5の達成率も高く、移行期(AP)/急性転化期(BC)に進行するリスクは低かった。データは、イタリアTurin大学のGiuseppe Saglio氏により米国血液学会(ASH)2013で報告された。

 フィラデルフィア染色体陽性(Ph)の慢性期(CP)にある慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する第1選択として、NILがIMに勝る利益をもたらすことを示すデータが蓄積されつつある。

 ENESTnd試験は、35カ国の217施設で新規診断Ph+ CML-CP患者846人を登録、無作為にNIL 300mgを1日2回(282人)、NIL 400mgを1日2回(281人)、IM 400mgを1日 1回(283人)に割り付けたもの。今回は、治療を中止した患者も含む登録患者から、2013年5月22日までに得られたデータを分析、報告した。有効性分析はintention-to-treatで、安全性の分析は割り付けられた薬剤を1回以上使用した患者を対象に行った。

 5年後も割り付けられた治療を継続していた患者は、IM群の51.2%、NIL 300mg群の62.4%、NIL 400mg群の65.1%だった。治療を中止した患者のうち、進行が原因だったのはそれぞれ3.5%、0.7%、1.4%だった。

 5年時のMMRの累積達成率は、IM群が60%、NIL群はどちらの用量も77%だった(いずれもp<0.001)。同様にMR4.5の累積達成率は、IM群31%、NIL 300mg群54%、400mg群は52%で、いずれも差は有意だった(p<0.001)。

 ベースラインのSokalスコアで3群の患者を層別化し、MR4.5達成率を比較したところ、どのリスクグループにおいてもIM群よりNILの2群のほうが達成者が多かった。ハイリスク患者ではその割合はIM群が23.1%、300mg群が44.9%(p=0.0041)、400mg群は42.3%(p=0.0105)だった。

 割り付けられた治療を受けていてAP/BCに進行した患者の割合は、IM群が4.2%、300mg群が0.7%(p=0.0059)、400mg群は1.1%(p=0.0185)。クローン進化をAP/BCに加えて分析しても結果は同様で、6.0%、1.1%(p=0.0009)、1.8%(p=0.0085)だった。続いて、治療を中止した患者も含めてAP/BCに進行した患者の割合を比較すると、IM群は7.1%、300mg群は3.5%(p=0.058)、400mg群は2.1%(p=0.0047)となった。

 割り付けられた治療を受けていた患者の無イベント生存率(EFS)と無増悪生存率(PFS)を比較した。5年EFSはIM群が92.6%、300mg群は95.0%(ハザード比0.61、95%信頼区間:0.30-1.28、p=0.19)、400mg群が97.4%(ハザード比0.32、95%信頼区間:0.13-0.81、p=0.01)。5年PFSはそれぞれ94.7%、96.5%(ハザード比0.57、95%信頼区間:0.24-1.37、p=0.20)、98.3%(ハザード比0.30、95%信頼区間:0.10-0.92、p=0.03)だった。さらに、治療を中止した患者も含めて5年全生存率(OS)を比較したところ、91.6%、93.6%(ハザード比0.84、95%信頼区間:0.45-1.58、p=0.58)、96.0%(ハザード比0.46、95%信頼区間:0.22-0.98、p=0.04)になった。

 過去1年間に新たに報告されたグレード3/4の血液学的有害事象と生化学的検査値の異常はわずかで、NILの忍容性は高いことが示された。しかし、心血管イベントのうち、虚血性心疾患、虚血性脳血管イベント、末梢動脈疾患を5年簡易経験した患者の数はIM群よりNIL 2群に多かった。NIL群の患者のほうがより長期にわたって治療を受けていたなどの理由から、これらの数字を単純に比較することは出来ないと考えられた。

 長期的な転帰向上に関係するEMR(治療開始から3カ月後の時点でBCR-ABLの発減量のIS換算値がベースラインの10%以下)は、IM群とNIL 300mg群の間で比較した。EMR達成はIM群の67%、NIL群は91%だった。1%以下になっていた患者の割合もNIL群で高かった(16%と56%)。3カ月時のEMR達成率は、Sokalスコアに基づくリスクレベルにかかわらずNIL群の方が高く、特にハイリスク群で差は大きかった(44%と86%)。

 両群ともにEMRを達成できなかった患者の5年PFSと5年OSは、ERMRを達成できたグループに比べ有意に低かった。また、BCR-ABL発現量が1%以下になっていた患者では、両群ともに5年時のMR4.5達成率が有意に高かった。

 得られた結果はNIL 300mgが新規診断CML-CP患者に対する標準治療になることを支持した。

*Ph+のCML患者の治療に対する分子遺伝学的反応は、定量的リアルタイムPCR(Q-RT-PCR)を用いて測定したコントロール遺伝子に対するBCR-ABL遺伝子の発現量の比を、国際基準となるIS(International Scale;IRIS試験に由来する)に換算した値に基づいて、以下の4レベルに分類される。

 MMR(major molecular response;分子遺伝学的寛解):BCR-ABL発現量がベースラインに比べ3log低下=0.1%以下に減少
 MR4(molecular response 4)BCR-ABL発現量が4log低下=0.01%以下に減少
 MR4.5(molecular response 4.5):BCR-ABL発現量が4.5log低下=0.0032%以下に減少
 BCR-ABL検出限界以下:BCR-ABLの発現の5log低下を検出可能な感度でも検出不能