新規PI3K阻害剤BAY80-6946copanlisib)は、再発・難治性リンパ腫において単剤で臨床活性を有し、許容可能な毒性プロファイルを有することが、オープンラベルフェーズ2試験から明らかになった。12月7日から10日まで米国ニューオリンズで開催されている第55回米国血液学会で、ドイツKlinikum Der Universitaet MunchenのMartin Dreyling氏が発表した。

 PI3K阻害剤は、PI3Kがドライバーとなっている腫瘍において臨床活性が示されている。BAY80-6946は、可逆性の汎クラスI PI3K阻害剤で、PI3K-δ、PI3Kαいずれのアイソフォームに対しても阻害活性を有している。主に白血球に発現し、B細胞シグナルや発達、生存において重要な役割を担うPI3K-δは、血液がんにおいて、理論的にも重要である。PI3K-δ阻害によってPI3K-α、βが増強されることが知られており、PI3K-α阻害は、PI3K-δ阻害で誘因されるPI3Kを介した耐性機序の克服に寄与する可能性があるとされる。

 試験では、前治療2ライン以上の再発・難治性の低悪性度または中悪性度リンパ腫に対して、BAY80-6946(0.8mg/kgから、最大用量は65mg)を28日1サイクルとして、第1、8、15日に1時間かけて点滴した。必要に応じて0.6mg(最大48mg)、0.4mg(最大32.5mg)に減量した。病勢進行または許容しがたい毒性の発現まで治療を継続し、Chesonらの基準またはIWCLL分類によって反応性を評価した。

 2013年7月31日の時点で、67例のリンパ腫患者(低悪性度33例、中悪性度34例)が登録され、治療を開始した。年齢中央値は68歳(低悪性度/中悪性度患者=68/68歳)、女性が52%(55/50%)だった。

 低悪性度リンパ腫の組織型内訳は、濾胞性リンパ腫(FL:G1-G3a)16例(48%)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)が14例(42%)、辺縁帯リンパ腫(MZL)3例(9%)だった。中悪性度リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DCBCL)が15例(44%)、マントル細胞リンパ腫(MCL)7例(21%)、形質転換低悪性度リンパ腫が6例(18%)、T細胞リンパ腫4例(12%)、縦隔大細胞リンパ腫1例(3%)、FL(G3b)1例(3%)。

 前治療としての化学療法は中央値3ラインで、自己造血幹細胞移植が低悪性度6例(18%)、中悪性度6例(18%)で行われていた。またリツキシマブ投与を受けていた患者は、それぞれ28例(85%)、28例(82%)だった。

 解析時点までに全例で何らかの有害事象が認められ、グレード3以上は低悪性度26例(79%)、中悪性度30例(88%)、合計で56例(84%)だった。重大な有害事象は低悪性度10例(30%)、中悪性度19例(56%)、合計29例(43%)であり、投薬中止に至ったものは、8例(24%)、7例(21%)、合計14例(22%)だった。

 10%以上の患者で認められた主な有害事象のうち、高血圧(38例57%)、高血糖(39例、58%)は半数以上の患者に認められたが、標準的な治療によって対処可能だった。消化器系有害事象として多かったものは、下痢(24例36%)、吐き気(19例28%)、血液学的毒性として多かったものは、好中球減少(19例28%)、貧血(15例22%)だった。

 本試験は現在も進行中だが、これまでに、低悪性度の13例、中悪性度の30例、合計43例(64%)が治療を中断している。Dreyling氏が「実臨床において、もっとも重要となる数値」としたのが、病勢進行とは無関係の有害事象による中断で、低悪性度で8例24%、中悪性度で5例15%、合計13例19%だった。

 治療サイクル数中央値3における効果は、低悪性度ではFLがCR1例、PR5例、SD9例、評価に至らず[N/A]1例で、奏効率[ORR]40%、CLL/SLLがPR6例、SD6例、PD1例、N/A1例でORR43%。中悪性度では、MCLがCRu1例、PR4例、PD2例でORR71%、T細胞リンパ腫がCRu1例、PR1例、PD2例でORR50%と、例数が少ないものの予想を上回る良好な結果が得られており、Dreyling氏は、「今後、例数を増やして、さらに検討したい」と述べた。

 治療持続期間は、組織型とは関連しておらず、MCL、DCBCLなどの中悪性度リンパ腫でも、治療継続中の例がみられる。最良効果も、大部分の患者で腫瘍縮小が得られ、Dreyling氏は、「FLやCLL/SLLのみならず、MCL、DCBCLでも、質の高い反応が得られている」と説明した。

 また最後に、十分な治療にも関わらず再発し、79歳と高齢であることから腎疾患や神経障害などの併存疾患もあったMCLの1例を提示。試験プロトコール上の最初の反応性評価は2サイクル後だが、症状が2週間ほどで消失したため、評価を試みたところ、1サイクル後にすでに腫瘍縮小が認められ、2サイクルの後の評価では、質の高い反応(残存疾患が10%以下にまで減少)が認められたという。Dreyling氏は「TKIやPI3K阻害剤の他の化合物と比較して、効果発現が速い印象がある」とした。

 その上で「新規PI3K阻害剤BAY80-6946は、再発・難治性リンパ腫において、許容可能な毒性プロファイルを有することが明らかになった。予備的な成績だが、有効性の成績も良好で、FL、CLLといった低悪性度リンパ腫のみならず、中悪性度のMCLやPTCL、DLBCLでもCRを含む良好な反応が認められた。今後、低悪性度、中悪性度の非ホジキンリンパ腫に対するさらなる試験が計画されている」とまとめた。