再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対するKSP阻害剤ARRY-520(Filanesib)のボルテゾミブ、デキサメタゾンとの併用投与は安全で、もっとも懸念された血液毒性についても、G-CSFによって予防可能であることが、フェーズ1多施設共同オープンラベル用量漸増試験で示された。12月7日から10日まで米国ニューオリンズで開催されている第55回米国血液学会で、米国Mount Sinai School of MedicineのAjai Chari氏が発表した。

 モーターたんぱく質キネシンの一種であるKSP(kinesin spindle protein)は、細胞増殖において重要な役割を果たしており、その阻害によって核分裂停止とアポトーシスがもたらされることから、新たな抗癌剤の分子標的として注目されている。選択的KSP阻害剤ARRY-520は、免疫調節薬(IMiDs)やプロテアソーム阻害剤(PI)とは異なる機序を有することから、これら薬剤の効果が得られない患者での有効性が期待される。またニューロンなど完全に分化した細胞はKSPを発現しておらずKSP阻害の影響を受けないことから、神経障害などの有害事象が少ないと考えられている。すでに、MMにおける単剤での活性や、前臨床モデルでのボルテゾミブとのシナジー効果が示されている。

 今回、以下の2つのスケジュールで用量漸増試験を行った。

 スケジュール1:ARRY-520(1.0から1.5mg/m2/日を第1、2、15、16日に静注)+ボルテゾミブ(1.0または1.3 mg/m2/日を第1、8、15日に静注または皮下注)±デキサメタゾン(40mgを1、8、15日に投与)
 スケジュール2:ARRY-520(2.25または3.0 mg/m2/日を第1、15日に静注)+ボルテゾミブ(1.3 mg/m2/日を第1、8、15日に静注または皮下注)+デキサメタゾン(40mgを1、8、15日に投与)

 登録基準は、再発・難治性MMまたは形質細胞性白血病、前治療2レジメン以下、PIおよびIMiDsによる治療を1サイクル以上完了し、その治療中または治療後に病勢進行、測定可能疾患、ECOG PS 0-1、血液学的機能、肝機能、腎機能正常、グレード2以上の神経障害あるいは痛みを伴う神経障害なしとした。

 28例(男性17例、女性11例)が登録され、年齢中央値64(31-79)歳、ECOG 0が10例、1が18例、診断からの期間中央値は4.0(1.6-12.0)年だった。

 C hari氏によれば、試験初期のコホートで好中球減少と敗血症が問題となったことから、G-CSFの予防的投与を行うこととなった。その結果、両スケジュールともに、予定していた最大用量(MPD)の投与を達成できた。MPDは、スケジュール1はARRY-520(1.5mg/m2)+ボルテゾミブ(1.3 mg/m2)+デキサメタゾン(40mg)、スケジュール2はARRY-520(3.0mg/m2)+ボルテゾミブ(1.3 mg/m2)+デキサメタゾン(40mg)。Chari氏は、「患者利便性の点で、週1回投与となるスケジュール2が、より好ましい」との見解を示した。

ボルテゾミブの最大用量を投与した28例中、有害事象による治療中止3例、減量を要したもの1例など、忍容性良好だった。好中球減少は可逆的かつ非蓄積性で、G-CSFによって適切に管理可能だった。非血液学的有害事象も少なく、多くはグレード1/2で、神経障害は28例中1例(グレード1)のみだった。

 ARRY-520の臨床効果は1.25mg/m2以上で認められ、1.25 mg/m2以上を投与したスケジュール1の19例では、奏効率(0RR)42%、臨床ベネフィット率(CBR:MR以上)53%、疾患コントロール率(DCR:6週以上のSD以上)68%だった。Chari氏は、PI不応の10例中3例でPRが達成されたことに触れ、「この薬剤がMMに対して明らかに作用を有することが、よく示されている」とした。同日のポスターセッションではARRY-520とCarfilzomib、デキサメタゾンとの併用の用量漸増試験結果も報告されており、今後、MMに対しては、これらの併用療法のフェーズ3試験が行われるほか、ARRY-520単剤でのフェーズ2試験も予定されている。

 なお、単剤での検討からα1-酸性糖たんぱく質(AAG)がARRY-520の反応性バイオマーカーとなる可能性が示唆されており、本試験でもAAG測定が行われた。奏効した患者や長期間治療を継続できた患者はいずれもAAG低値だった。Chari氏は、AAGがARRY-520のバイオアベイラビリティーを低下させるために、AAG高値の患者には奏効しないのではないかと考察し、AAGがARRY-520の効果予測マーカーとなることに期待を寄せた。今後の研究の方向性については、「AAG低値の患者のみを対象とする試験を行う、AAG高値の患者についてより高用量での用量漸増試験を行う――という2つが考えられる。しかしまずは、臨床的なAAG測定法の確立と、より多数例での検証が必要だ」との見解を示した。